暮らしの中にあるものづくりの風景 七宝作家 Kenichi Kondo(前編)

色彩豊かなガラス質の釉薬と繊細な金属の仕事によって作られるジュエリーはシンプルなものから装飾的なものまで幅広く展開する七宝作家 Kenichi Kondo。前・後編で公開します。

JJ:
はじめまして。今日はよろしくお願いいたします。今日は埼玉県北本市のご自宅兼アトリエにお邪魔させていただいておりますが、こちらにはもう長く住まわれていらっしゃるのでしょうか?

近藤:
よろしくお願いします。そうですね、この家に移ってきてからはもう年です。その前から、近くに住んではいたんですけど。

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JJ:
すごくいいところですね。なんだか、これまでのJJのインタビューとはまた違うところに来られた気がします、、暮らしそのものに、お人柄が表れてます!

近藤:
この建物は昔、養蚕をしていたらしいんですが、珍しい造りですよね。今は、1階で暮らしていて、2階をアトリエにしています。

JJ:
ここまで来る道やお庭もいい感じでしたけど、内側も素敵。いろいろ伺わせてください!早速ですが、近藤さんは「七宝作家」としてNew Jewelry に参加されていますが、七宝とはいつ出会われたんでしょうか。学生時代ですか?

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金工から七宝へ・・・色の魅力

 


近藤:
実はそれが、大学時代は武蔵野美術大学で金工を専攻していたので、直接七宝というわけではないんですよね。

JJ:
当時は何をつくられていたんでしょうか。

近藤:
何だろう、オブジェみたいなものを作ってましたね。そもそも、専攻するときに、テキスタイルか金工かで迷ったんです。

JJ:
全然違うものに素人目には思いますが、、

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近藤:
そうなんですよ。決め手は、一通りやってみて、カーンカーンって打つ音とか動作が気持ちよかったので選んだ感じ。

JJ:
音とか振動とかって、感覚的に思えるけど、すごく大事な要素ですよね。結果その決断がつながってますもんね、今に。

近藤:
卒業してから、スーツを着て満員電車で通勤する、みたいなことには現実味を感じられず、自然に物作りを続けていました。でも、卒業してすぐ妻と結婚して子供も生まれることもあって、縁あって七宝の会社に就職したんです。当初は営業だったので、いきなり何かを作り始めたわけではないんですが。時間を見つけてものづくりは続けていて手を動かしていたので、七宝にも挑戦しはじめました。それで、なんかぴったりはまったんでしょうね。

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JJ:
なるほど・・七宝の面白さにのめり込んだんですね。

近藤:
多分、色かな?金工を選択しておいて、元はと言えば色が好きっていうのもあったから。

JJ:
そうか!テキスタイル専攻と迷われてたというのも、色がキーだったのかもしれませんね。

近藤:
それから色々つくりはじめて、アクセサリーをつくりはじめたんです。

JJ:
偶然と必然が絡み合ってきたわけですね・・・そこから、コンテンポラリージュエリーにカテゴライズされたのは、どうやってそうなったのでしょうか。

近藤:
アクセサリーが仕上がったら、色々東京のお店に何店舗かに見せにいって。で、いくんだけど、全然取り合ってもらえなかったり、、そうすると、すぐ「だめだー」ってなって帰ってきちゃって 。

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クラフトでありコンテンポラリーな七宝

近藤:
それで、ギャラリードゥポワソンがコンテンポラリージュエリーのギャラリーだということは知っていたので、ここだけは!と思って持って行ったら、ディレクターの森さんが見てくれて、意見をもらえたんですよ。

JJ:
そうだったんですね!てっきり、七宝でコンテンポラリーなものをつくるプロジェクトなのかと勝手に思ってしまうくらいコンテンポラリーさを気に入ってました。

近藤:
いやいや、色々意見ももらって、開けたんです。これまでにない一面が出来て、New Jewelryで見せてる面は、自分の中では今までとは違った一面だと思っています。変わらず、益子陶器市で平台に並べたりすることもあるし、両極端。

JJ:
私は近藤さんのジュエリーを、ドゥポワソンで初めて拝見したので、コンテンポラリーな面の一方向ばかりを捉えてました。色の組み合わせと、シンプルで、でもどこにでもある形だけじゃない展開で、とてもコンテンポラリーだと思いました。七宝って他で見るとクラフト寄りな印象で、だからこそより新鮮だったのかも。

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今の自分にあったものづくりとの付き合い方

近藤:
うれしいですよね、そういうまた違った一面を引き出して見てもらえるって。コンテンポラリージュエリーのギャラリーなのに、今でも「七宝作家」とご紹介いただいていて、とてもありがたいです。

JJ:
コンテンポラリージュエリーとしてはごく一面、との事ですが、その他の面はどんな面があるのでしょうか。ご自宅とアトリエを拝見させていただくと、芸術がすぐそこにある暮らしのようにお見受けできますが。

近藤:
うちは父が大学教授なんですが、コンピュータグラフィックスをやっているので、周りにも美大の先生や美術に関わる人が多くて。興味を持つのは自由な感じだったんです。それで、美大に進学して、そこで出会った妻と結婚して、制作をお互い続けています。

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JJ:
なるほど。なんだか、芸術に対して、構えずにごく自然に向き合っているように感じるんですよね。淡々と、というか。それで、ありのままとして暮らしていらっしゃる。どうやって生活するかというのもその線の上にあって、芸術そのものが、「特別にかけ離れたクリエイティブな活動」ではなく「当たり前にそこにある営み」である、というか。

近藤:
確かにそうですね。特に、子供達3人とこうやって暮らしているので、自分が制作に割ける時間も限られていますし、今はものづくりとはそういう付き合い方をしています。全部を捨てて制作に集中する、という作り方もあると思うんですが、今の自分にはそういうのではなく、納得して。そのやり方で取り組んだからこそ出来上がってくる作品もあって、それもまた面白いですから。

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JJ:
そういった姿勢を考えると、この北本市という地で活動されてるのも納得できます。東京との距離や、自然環境的にも。また市がものづくりなどに協力的であるとか。

近藤:
そうなんですよ。とてもいい環境です。また、子供の成長に合わせてまた色々考えていたりもしますが。

JJ:
一家で芸術とともに暮らしに体当たりしているがすごいです!

近藤:
そんな風に褒めてもらってるけど、あとは好きなサッカーチーム アーセナルの情報を見たりするのが好きな普通の人間です笑。

JJ:
制作の緩急をきっとそうやってコントロールされているんだと思います。やっぱり、自然体ですね!

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近藤さんのものづくりの哲学を伺ったところで、後半へ。後半では、アトリエの様子や、今後の展望などお話を伺っています。

 

interviewd by Hiromi Midorikawa
photo by Yuka Yanazume
KENICHI KONDO:http://www.kenichikondo.com/
Jewelry Journal Artist Page:https://www.jewelryjournal.jp/brand/kenichi-kondo/

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