YON(ヨン) クリエイティブ・ディレクター hideya×山城葉子 インタビュー

世界がコロナ禍に沈黙した時代、そんな状況に光を照らすように誕生した新星がありました。

ジュエリーブランド「YON」。ウエディングやライフスタイルの業界で活躍を続ける山城葉子さんと、ニューヨーク暮らしの後に音楽から空間演出まで多彩に活動領域を広げていたhideyaさん。「ジュエリーは未経験。だから楽しいし自由になれる」という二人のクリエイティブ・ディレクターが生んだブランドは、遥か彼方を見据えた世界観を根底に、多くの人々から愛される存在に成長しました。

「YON」の創業は2020年。しかし二人の友情やクリエーションは、その前からすでに始まっていたそう。創業前夜から現在地点まで、さらに未来地図を語っていただきました。

ブランドを象徴するシグネチャーシリーズ「Zero」。まさに「ゼロから始まる何か」を夢見た二人のクリエイティブ・ディレクターらしい斬新かつ普遍的なデザイン。

「この二人なら出来る」、そんな閃きから生まれたYON

hideyaさん(以下hideya):

「YON」について、こうして二人でインタビューを受けるのは久しぶりです。最初のインタビューはブランドがデビューしてすぐでした。

山城葉子さん(以下葉子):

私たちが「YON」がスタートしたのはそのさらに2年前のことでした。私、初めてhideyaさんに会った時に「この人とならブランドを生み出せる」って確信したんです。

hideya:

大勢の友人で集まってイタリアンレストランで食事した夜ですよね。僕はもちろん葉子さんのことは以前から存じ上げていて、少し緊張していました。賑やかに楽しく過ごした翌日、葉子さんから連絡があり、「ちょっと相談したいことがあるので、一度ブランチでもいかが?」と。そしてその翌日に朝食をご一緒して。急展開でしたし、何事かと思いました。

葉子:

当時私は、お世話になっていたジュエリー関係の方から「ラボグロウンダイヤモンドを生かして、新たなジュエリーブランドを立ち上げることができないか」というご相談をいただいていたんです。ウエディング業界が長かった私は、もちろんジュエリーもドレスもたくさん見てきましたが、自分でジュエリーブランドを立ち上げるなんて想像もしていませんでした。

考えあぐねていましたが、hideyaさんとお会いした時に「この人となら」と閃くものがありました。その直感は、正しかったと思います。

hideya:

それからはたくさん打ち合わせを重ねました。コロナ禍に突入してしまってプロジェクトは計画通りに進みませんでしたが、それでも、「YON」について二人で話し続けたんです。行動が制約された世界で、逆に「YON」のイメージをいくらでも語り合う時間が作れたのかもしれません。


誰もが誕生を待ち侘びたラボグロウンダイヤモンドジュエリー

YON誕生の頃のお二人の話を伺いながらもう一つ興味深いと感じたのは、ラボグロウンダイヤモンドの新ブランド創設の相談が、この時期に山城さんめがけて放たれたことでした。

天然ダイヤモンドとまったく変わらない成分性質を持つ新たな存在、それがラボグロウンダイヤモンド。日本でも、既存のジュエラーたちが、その価値をどう定義するか慎重に思考していた時期であったかと思いますが、一つ言えるのは「誰もがその扉が開かれるのを興味深く見つめていた」ということ。山城さんの当初の逡巡と、hideyaさんとの出会いでチャレンジを決めた経緯も含めて、振り返れば必然の流れだったように感じられます。

対談インタビューを行ったのは、hideyaさんが仲間と食事を楽しんだり自らが暮らしたりしている東京の家、通称「hideya house」の大きなダイニングルーム。hideyaさんが選んだ数多くのアンティークアイテムやテーブルウェアに囲まれてリラックスする山城さん。

今の自分に無理なく寄り添うジュエリーを目指して

2020年の夏に産声を上げた「YON」。二人がジュエリーに対して夢や理想を何度も話し合って、丁寧に作り上げていったブランドですが、二人がそもそも目指したものはどこに向かっていったのかをさらにお聞きしました。

葉子:
世に出る前にも紆余曲折ありましたが、ようやく最初の一歩を踏み出した「YON」でした。お客様からこんなに愛してもらえるようになったのがいまだに信じられないし本当に幸せです。

hideya:
ポップアップイベントや展示会に来てくださる方々が、「親子で貸し借りして楽しんでいます」とか「母にプレゼントしたら喜んでくれて」とかおっしゃるのがうれしいですよね。ブランド創業前に僕たちが語り合っていたことが実現している感じもあって、個人的にはそこに感動します。

というのも、僕たちは元々ジュエリー業界出身ではないし、お互いに好みが似通っているわけでもない。僕は割と存在感のあるジュエリーを身に着けるのですが、葉子さんは繊細で女性らしいものを、その日の服に馴染むように選びます。しかし、「YON」に関しては一致する意見がありました。

葉子:
そうなんです。「手持ちのジュエリーに重ね着けができること」「他のものを邪魔しないこと」は、ブランドの方向性としてマストでした。デビューの時に比べてコレクションは増えましたが、一貫してそれらは大切にしている部分です。その方が使い手にとってはうれしいし、出番が多くなるとわかっていたから。

ジュエリー業界出身ではありませんが、私はウエディングの世界で多くのジュエリーを目にしてきました。hideyaさんも空間プロデュースの仕事を通してジュエリーを見せる空間作りを多く経験されてきました。私たちはリアルな暮らしの中で、着けていることを忘れてしまうくらい馴染みつつ心にキラキラした喜びを与えてくれる、そんなジュエリーを欲していたんだと思うんです。

この日はたくさんYONのジュエリーを重ね着けしていたhideyaさん。男性が身に着けても違和感を感じさせず、中性的な魅力を引き出してくれるのもYONの使いやすさの一つ。

徹底的に追い求めているのは究極のバランス感覚

hideya:
加えて言うなら、「YON」の真髄といえるようなところが二つあり、一つは葉子さんのような女性に似合うことだと思っています。初めてお会いした時からずっと見てきましたが、彼女は、旅が大好きで家族を大切にして、仕事も好き。そしてウエディングという舞台では常に新郎新婦やそのご家族の思いを考え続けている人です。

女性らしくて軽やかで、なんだかこう爽やかな風に吹かれているような、そんなイメージで。きっと僕は、どこか心の隅っこで葉子さんを「YON」のペルソナにしてきたのではないかと思います。

葉子:
それは光栄です(笑)。もう一つ、「YON」が大切にしているのはバランスです。それも絶妙のバランス。言うのは簡単ですがとても難しいんです。例えば「YON」で好評をいただいているアイテムの一つにテニスブレスレットがありますが、これは石のサイズ感はもちろん、手首のどの位置にどう沿うかがとても大切。

他にも、ピアスは耳元のどの位置で揺れるかとか、そういう「あと少し短かったらいいのにね、薄かったらいいのにね」というバランスに関して、私たちの感覚は似ています。「YON」のジェエリーは身に着けやすいと言っていただくことが多いですが、デザインの裏で果てしないバランス追求をしている部分があるからではないかなと思います。


確かに、「YON」のジュエリーはさりげないデザインのものが多いのに、一目で心に刺さる粋なフックのようなものを感じます。そして実際に身に着けてみると計算されたディテールに感心します。チェーンの長さ、ペンダントトップの薄さ、重さや軽さ、光り方や存在感まで、人によって似合うものは違うのに、なぜか「YON」のジュエリーを身に着けると、長年愛用してきたもののように身体にすんなりと収まります。手持ちのジュエリーとも、合わせた瞬間から相棒のように仲良くしてくれる、そんな優しさも感じられます。

日灼けした肌にいくつも載せたYONのジュエリー。一つ一つのデザインはそれほど主張するものではないけれど、どれもよく見れば考え抜かれたセンスが宿っていて、重ねて着けても決して嫌味にならない。

ラボグロウンダイヤモンドの可能性に未来を見た

「YON」が生まれてから6年。お二人にとっては変化の多い時間だったようですが、印象的だったことは何かお聞きしてみました。

葉子:
2023年夏に、新宿伊勢丹1階の「ザ・ステージ」で「YON」のポップアップイベントが開催された時のことでしょうか。ブランド創設わずか4年でこんな光栄な場を与えていただき、イベント前夜に会場を眺めた時は涙があふれました。

hideya:
あのイベントは僕も忘れられません。「カレイドスコープ(万華鏡)」をテーマに展開しましたね。ラボグロウンダイヤモンドのルース(研磨された宝石の単体)を入れた万華鏡作りのワークショップを開催したりして。ラボグロウンダイヤモンドに対して、消費者や業界の方々の期待値がどれほど高いかをリアルに感じたイベントでした。

天然ダイヤモンドとまったく変わらない成分性質を持つ石を人工的に作れるようになったものの、それをどう捉えていいのか、どう扱っていいのかを決めかねているような状況をうっすら肌で感じていたんです。逆に、ジュエリー業界出身でない僕たちだからこそ、そこに乗り出せたのかもしれません。いざ創業したら多くの百貨店バイヤーたちが展示会に来てくださったし、新聞やメディアでもきちんとした形で紹介してくださった。そしてデビュー4年後に新宿伊勢丹の「ザ・ステージ」があって、感慨無量でした。

2023年夏:新宿伊勢丹1階「ザ・ステージ」での様子

イベント直前、山城さんは「お客様が来てくださらなかったらどうしよう……」と心配になってhideyaさんに電話し、一方のhideyaさんは「お客様が溢れて入れなくなったら大変なので整理券を製作中」だったという、今では信じられないような話も。

よく働く経営者、イマジネーションが尽きないクリエイター、そして母であり……という「今を生きる女性像=葉子さん」に似合うジュエリーこそきっと多くの人々から愛される存在になるだろうと考えた、とhideyaさんは語る。

葉子:
ダイヤモンドを取り巻く世界は日々刻々と変化していて、私も「YON」に携わるようになってからはさらに学びました。今では、天然かラボグロウンかみたいな対立図式で考えるのではなく、それぞれの良さや存在意義があると思っています。

例えば私は「YON」以外だと、自分がクリエイティブ・ディレクターを務める「TREAT」(ウエディングカンパニー)でもラボグロウンダイヤモンドを活用しています。素晴らしいドレスをご準備された新婦さんには、やはりドレスの格式に合うティアラやジュエリーを身に着けることでもっと華やかな気持ちになれるのではと思って。それがきっかけで、ラボグロウンダイヤモンドを使ったウエディングジュエリーのレンタルも始めました。

結局これも、バランスの話なのかなと思います。何を身に着けるか、選ぶかということよりも、身に着けたものが全体的にバランスよくその方を引き立てているか、その方ご自身が幸せな気持ちでいられるかどうかという。

鳥の羽根や小さなカエル、ウサギ、松葉など、ユニークなモチーフをシンボリックなチャームに仕立てた「Symbol」シリーズ。日々を豊かに彩ってくれ、コミュニケーションのきっかけも務めてくれる小さくも存在感あるジュエリー。

ダイヤモンドのきらめきが日常を豊かにしてくれる

hideya:
同感です。ラグジュアリーブランドは文句無しに素晴らしいですし、自分もそんな世界で仕事をしている経緯もあり、心から尊敬しています。老舗メゾンが伝統的な技法を駆使して紡ぎ出すジュエリーに抗う気持ちは毛頭ありません。

「YON」の立ち位置は、また少し違うと思っています。ダイヤモンドのきらめきは身に着けているだけで最高の高揚感を生み出してくれます。なので、ドレスアップしてドキドキしながら身に着けるのもありなら、Tシャツ姿で日焼けした肌に合わせるのもあり。どちらでも楽しめるように、そんな願いを込めて作ったブランドなんです。

葉子:
今日も私たち、カジュアルな服にたくさん「YON」を身に着けています。これだけ重ねても不思議と重い感覚はなく、手元にきらめく光を見るにつけ気持ちが高揚するんです。

久々に創業時のことを語り合い、笑顔がこぼれる。2026年夏には横浜に二人が別々の部分で関わる新たなホテルが開業することもあり、協業体制もまた強いものになっていきそうな予感。

hideya:
葉子さんの価値観は揺らぐことがありません。僕が葉子さんとご一緒できてよかったなと思うのは、葉子さんの人間性に惹かれているから。常に軽やかでニコニコしている葉子さんですが、芯の部分が本当にしっかりしていて、驚くような発想を聞かせてくれることもあるけど、とにかく価値観がブレない。根底の思想がしっかりしていて、それに触れるとこちらも気分がいいというか、学ぶところが多いんです。

葉子:
今日はたくさん褒めていただき、逆に照れています(笑)。ただ、ダイヤモンドのきらめきがもっと広く楽しめるようになるのは、単純にうれしいことだと思います。

hideyaさんの胸元に、秋から新たに展開予定のカラーストーンジュエリーの試作アイテムを発見。スクエアのエメラルドは、モダンで存在感がクール。

「HALO by YON」が奏でる新たな世界観にも注目

対談インタビューの最後には、2026年9月にデビューした新コレクション「HALO by YON」の話に。このコレクションではシルバーを軸に天然石を組み合わせたアイテムもお目見えしました。「僕たちにとってはちょっとした試みでした」と語るhideyaさん。ですが、よく見ればすでに胸元には美しいエメラルドグリーンの光がきらめいています。

葉子:
「HALO by YON」は、シルバーを用いていることや天然石を取り入れていることが大きなチャレンジとなります。hideyaさんが着けていらっしゃるのはテストで作ったものですが、素敵なアイテムがたくさん揃いますのでワクワクしています。

hideya:
「HALO by YON」は、今まで「YON」を愛してくださっていたお客様にも気に入っていただけると確信しています。だって自分がもう、このエメラルドのペンダント(と言いながら胸元を眺める)に夢中になっていますからね。楽しみにお待ちください。

HALO by YON(ハロ バイ ヨン)誕生。シルバーと色彩で描く新たなジュエリー


発想のセンスを支える確かな技術力、チャレンジ精神に添えられた堅実なキャリア。彗星のごとく登場した「YON」ですが、愛される理由は単純にして明快でした。身に着ければハッピーな気分になれ、周りにいる人にも心地よい光を与えてくれるような「YON」のジュエリー。次に目にする機会があれば、ぜひ実際に試着をどうぞ。着けた瞬間から長年の友のように優しく寄り添ってくれるはずです。


山城葉子/YOKO YAMASHIRO
20代より人気ウエディングプランナーとして活躍。「Plan Do See」在籍時に当時の社長からバイヤーを任され、27歳でウエディングドレスショップ「The TREAT DRESSING(現TREAT)」を立ち上げる。2012年にクリエイティブディレクターとして独立した後はレンタルドレスショップや子供服ブランドを創業するなど多方面で活躍。2025年に「TREAT」の代表取締役クリエイティブディレクターに復帰し、大きな話題に。2020年にHideyaと共にジュエリーブランド「YON」を立ち上げる。

hideya
アートディレクター、インテリア・空間デザイナー、プロダクトデザイナー、アーティスト。10代をニューヨークで過ごし、帰国後に自宅でのホームパーティーのセンスが話題となり次第に空間プロデュースやフラワーデザイン、フードクリエイションの仕事依頼が来るように。現在、インターナショナルなファッション、コスメ、時計、シャンパン、モビリティなどのメゾンからホテル・レストランまで、ジャンルを超えて活躍している。

interviewed on 2026.8
text by Mayuko Yamaguchi
photo by Yumiko Miyahama