真面目なデザインと徹底して偏ったアートディレクション PENTA (後編)

PENTA のデザイナー FUJI TATE P (フジタテペ)さんにインタビュー。ものづくりの核心に迫る後編です。前編はこちら

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自分で作りだせないものは作らない

JJ:
PENTA の最大の特徴は、やはり全て丸からなり、それが立ち上がって立体になっているところだと思うんですが。

フジタテペ:
元から、小さいものがたくさんっていうのが好きなんです。マスゲームとか、モーニング娘。とか。たくさん集まってるとかわいい、というか。自分の中で小さいものは100個買う、とかいうルールがあったりします。規則正しいものの集合体の強さがすき。「スイミー」とか、あと中学はブラスバンド部で、マーチングバンドが対称に動いて、どうやるとバチッとハマる!みたいのは好きでしたね、当時から。

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JJ:
確かに、刺繍も、ビーズも、規則正しい連続の集合ですもんね。でも、それが立ち上がって立体になっちゃうところなんかは、本当にユニークだと思います。

フジタテペ:
そうですか?でも人って立つじゃないですか笑。飽き性なので、平面だけをずっとやっていて飽きた、次どうしようというのはありましたよね。で、じゃあ立体だって。

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JJ:
それはそうですが、普通ビーズが立体だ、となったら、熊の人形のキーホルダーみたいな感じで、中身の詰まった立体になりますよね。

フジタテペ:
ああ、そうですね、、そういう意味でいうと、さっきの無駄な材料を出したくない、と同じようなことですが、言うなれば最低コストで最大限の値段で売りたいわけですよね。そう考えたときに、中身を詰めるのは効率が悪いんです。しかも、身につけるのに重くなるし、問題だらけです。あとは、自分で作りだせないものは作らない、って決めていて。中身の詰め物が作れないから、やれないんですよ。ひとりで完結してつくるためにも、自然にこういう形になりました。

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デザインは誰かのために何をするかの解釈

JJ:
デザインのスタートは、問題提起なわけですね。取り組まれているプロジェクトが多数、断片的に写りがちですが、根っこがそこにあると。感覚的じゃない気はしてました。

フジタテペ:
そうですそうです。やっぱり、デザインは誰かのために何をするかの解釈だと思うので。ビーズ業界のデザインが現代的ではない、というのは問題だと思ったので今取り組んでるっていう。

JJ:
そういう、最近語られ始めたデザインのあり方にどっぷりなのに、自分で手を動かせるところがフジタテペさんの強みですよね。

フジタテペ:
僕はデザインをどこかで学んだわけではないし、最大は、絵が下手で。なので手を動かしてつくるしかなくて、だからプロトタイプは必ず自分で作るし、ものすごい量のサンプルをつくります。PENTA は、こういうマス目でこういう面が作れる、っていうのをまとめた秘密のノートがあるんですけど、これに多面体いろいろの設計図みたいなものも入ってます。

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JJ:
多面体!確かにそれも小さな何かの集合体ですもんね。その発想で3D になっちゃうんですね。すごいな。

フジタテペ:
あとは、何をするにも、なんでもルールを決めてあるんです。PENTA の場合は、「丸の集合体で出来ていること」と「一筆書きで作れること」。そのルールに合うものは残して、合わないものははずしていく。そういうデザインの仕方をしています。迷わなくていいから、楽ですし。

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JJ:
ルール!確かに、、華やかな雰囲気の反面、そういうところ生真面目ですよね。他にもルールはありますか?

フジタテペ:
他のブランドすべて、ルールがありますよ。あと、ブランド名は全部アルファベット5文字、とかもルールです。

JJ:
それも効率化ですね?!でも、出来上がってくるデザインは、効率化を精査したものじゃないんですよね。デザインのインスピレーションや、フジタテペさんのセンスを構成する要素は、なんだと言えますか?

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どうやったらみんなをわくわくさせられるか、いつも考えています。

フジタテペ:
なんですかね、映画も好きだし、あとはもう洋書、ですかね。週に3回はLOGOSで洋書見てます。例えば、このコレクションのビジュアルは、洋書で出会ったフォトグラファーの表現にものすごくアートディレクション的にすごくインスパイアされたり。調べてみたら若いフォトグラファーで、実はオファーしてみた りもして。結局日程が合わなくてだめだったんですけど。

JJ:
その辺の追求しようとするところ、すごいですよね。変態的笑。アートディレクションに比重を徹底して大きく取っていてすごいといつも思います。そこにたどりつくために、好きなもののひたすら蓄積が感性をつくってますよね。以前、刺繍のイベントで出していた刺繍のサンプル帳も、フジタテペさんのセンスの塊を見たようで、相当ときめきました。

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フジタテペ:
これですね!サンプル帳を見る人にとって、ドキドキすることって重要じゃないですか。プレゼンテーションとして。だから、新聞に刺繍しました。それも大好きなヴィクター&ロルフに!どうやったらみんなをわくわくさせられるか、いつも考えてます。

JJ:
デザインをしはじめて形をつくるときはシンプルにしていく方向に頭脳的なにデザインの矢印が動いていて、そのものを見せるということに関しては極めて感性よりで判断しているんですね。左脳と右脳、両方。でもその順番が重要っていうか。すごく、面白いですね。最後に、今後の展開や野望を教えてください。

フジタテペ:
言うなれば、PENTAはビーズジュエリーの価値を上げることに挑戦しているんですよね。彫金やダイヤモンドと同じ価値で並ぶようになったら勝ち、というか。そこを目指したいです。あとは具体的には、竹シリーズや、人気のスターのシリーズなど、新作はシリーズ毎に発表していますが、PENTAはコレクションを発表しているんですね。そこで、全シリーズがそのコレクションカラーになる。今はその構想中で、もう頭の中ではイメージが出来てます。来年発表できると思うので、楽しみにしていてください!あと、、、仕事の話をすると、几帳面!とか言われるんですが、私生活は至って大雑把で、基本横ノリの生き方なんで、どこかで見かけたら、気軽に声かけて下さい笑。

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効率化・ルール・マス目などの左脳系まっしぐらなワードが飛び交い驚かされましたが、その細かさあってこそ自由なものづくりがあるという真面目な要素。同時にインタビュー当日、朝帰り、なんて言いながら、それも完成度の高いアートディレクションに欠かせないのであろう、基本遊びながら自分をアップデートしているフジタテペさん。その二つの要素を地でいく彼のデザインが、これからも楽しみです。

interviewed by Hiromi Midorikawa
photo by Yuka Yanazume

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