オパールが眠るオーストラリアの鉱山へ《talkative》インタビュー − 前編

世界でも有数のオパール産出国であるオーストラリアに、《talkative(トーカティブ)》代表・デザイナーのマロッタ忍さんが飛び立ったのは今夏のこと。オパールの鉱山で実際に採掘も体験し、多彩な輝きをもつオパールや珍しい天然石に出会ってきたマロッタ忍さんに旅物語を伺いました。

現地で買い付けてきたオパール

ライトニングリッジの鉱山を目指して

「今回の旅のきっかけは、オーストラリアのライトニングリッジでオパールの鉱山を持っている日本人の蓑田さんと、数年前の海外でのジェムショーで知り合ったことです。だいぶ前から『いつでもおいでよ!』とおっしゃっていただいていたのですが、なかなかタイミングが合わなくて。ライトニングリッジはブラックオパールの産地で有名で、年に1回オパールのショーを開催しているタイミングでの渡豪となりました。

シドニー、ライトニングリッジ、ゴールドコーストを約2週間かけて旅をし、その道中で出会ったオパールをはじめとする天然石やレアストーンを買い付けてきました」

ライトニングリッジは、シドニーから約770km離れた内陸部にある人口約2000人程の小さな町。シドニーからセスナで移動し、さらに到着した空港から車で約3時間移動。「どこまでも青い空と道が続く田舎町の景色に見えますが、少しすると周囲の土の色が赤みを帯びていきました。この赤土が再び白っぽくなると鉱山が近い証です。発掘された白い砂岩が長年に渡り風化したものが舞い上がって赤土の上に積もるため、鉱山周辺は白土の大地が広がっていました」

写真左から、採掘場の入り口。各々が所有する採掘場は、ナンバーが打ち込まれた杭が目印。ライトニングリッジの鉱山は50m四方が1区画で、採掘の深さは制限がなくどこまでも掘ることが可能。

真夏は暑さでとても作業ができる環境ではないため、ライトニングリッジの鉱山はサマーシーズン以外が採掘期間となる。その間、マイナー(オパール鉱山のオーナーや、掘る人)はキャンピングカーや簡易的な屋根のある空間を作り、現地に暮らす。採掘の幸運を祈って、ラッキーモチーフの馬蹄が入り口についている。

「ハーキマーダイヤモンドクォーツの鉱山を見学するためにニューヨークへ旅したことがありましたが、オパールの鉱山は今回が初めて。蓑田さんは前所有者が手放した鉱山を手に入れたそうで、途中まで掘られていた状態から掘り進めていますが、なにも採掘をしていない土地を掘り始めるにはまずダウジング(地下水や貴金属の鉱脈など地中にあるものを、棒や振り子などの装置の動きによって発見できるとする手法)で断層を見つけるのがファーストステップだそう。

これにはオパールの成り立ちが関係しています。オパールは水中で微小な珪酸球が沈殿し、岩石の隙間などに密に蓄積して形成される鉱物の一種。断層がある=地層がずれているため、その隙間にオパールが眠っている確率が高いと言われているそうです」

いざ、オパールが眠る地下の世界へ

「地下に降りると中はヒンヤリ涼しいですが、1時間ほど何も動かずにいると凍えるぐらいの気温です。落盤を防ぐため支えとなる柱を残して採掘していきますが、粘土質の地層ゆえに落盤や崩落の心配もないわけではないという厳しい環境。『右から音がしたら左に逃げろ、左から音がしたら右に逃げろ、両方から音がしたらあきらめろ(笑)』と現地のスタッフは話していましたが、いつ何が起こるかわからない地下の世界で一心不乱にオパールを探します」

約15m(マンション5階分)の深さを、簡易はしごで降りていく。

採掘するための部屋ができたら、機械や手作業でオパールを探す。

「現地の人に話を聞くと良質なオパールが5年間も取れない時もあれば、前の人が手放した鉱山をたった1m掘り進めたら良質なオパール層を発見できた人もいたりと、採掘所ではオパールを巡る物語をたくさん聞くことができました。一か八かのギャンブル的な職業でもあるわけですが、暗く寒い地下の世界でオパールを見つけたときは言葉では表現できないような喜びや興奮に満たされる気分でした。これを一度体験してしまうと、魅了されて離れられないと話す人の気持ちがよく分かりましたね」

実際に採掘作業を体験させてもらったマロッタさん。最初はジャックハンマーで掘っていき、オパール層が見えるとツルハシで少しずつ丁寧に掘り出す。「ツルハシをオパール層に当てては絶対にダメ!」と事前に注意されていたにも関わらず、使い慣れない道具ゆえにオパール層にツルハシを当ててしまうことも多々あったそう。

右写真は、オパールの原石。マイナーによる発掘でかなり良質なオパール特有の遊色効果を見ることができる。

写真左より、断層の隙間にオパール層が連なる。遊色効果のない部分をポッチと呼ぶ。写真右は、マロッタさんが発掘したオパール。分厚いポッチの間にかすかに遊色効果の層が見られる。

宝石学の先生が語っていた言葉が世界を繋いでくれた

石が好き、その石が生まれる場所を自分自身の目で見てみたいと行動を起こすマロッタ忍さん。そんな彼女が石を好きになった理由のひとつに、学生時代の恩師との出会いがあった。

「ブランドがスタートして今年で11年目ですが、《talkative(トーカティブ)》のジュエリーに本格的に一点物の色石を展開するようになったのは、ブランドを始めてから数年経った頃のことです。ブランドを始める前からも石は好きで個人的にコレクションしていたのですが、その魅力を教えてもらったのはジュエリーの学校に再入学した学生時代のこと。宝石学の先生が教えてくれる世界中の石の話に魅了されて、教科書に『世界中の石が集まるのはアメリカのアリゾナ州ツーソンで開催されるショーがある』とか『タイや香港にも巨大な天然石マーケットがある』といったような断片を夢中でメモしていました。いつかそこに行ってみたい、いや、行くんだ!と、ずっと夢みていましたね。

こうして学生時代に思い描いていた石の世界に実際に触れることができるようになったのは、もちろんいろんなご縁のおかげです。また、私自身が夢を語り続けたというのも大きいかもしれません。ブランド設立前、企業デザイナーとして勤めていた時代も、兎にも角にも石が好き!と周囲に話していたらその噂が社長にまで伝わり、入社1年目でツーソンへの買い付け出張に行かせてもらうという幸運にも恵まれました。

夢を話してしまうと叶わないというジンクスもありますが、私はそれを信じていません。夢を語れば誰かが気づいてくれて、そこに繋がるチャンスをくれるから。

今回の旅では、ライトニングリッジの研磨師・ジョーさんの工房や現地で開催されていたオパールのショーにも立ち寄ることができました。旅の間、日中は会場を巡り歩いて石をじっくりと吟味して、夜ホテルに帰ってくると買い付けたオパールをテーブルの上に全部並べて一人ニヤニヤしながら愛でたり、明日はこんな石と出会えるといいなと空想してみたり。毎日ヘトヘトになりながらも、旅の終わりが近くにつれ石のコレクションが少しずつ増えていくのはまさに至福のひとときでした」

ライトニングリッジの研磨師・ジョーさんと工房の様子

写真左はオパールを研磨するためのオパール。写真右は研磨師・ジョーさんの自宅庭に居座る野生のカンガルー。「ライトニングリッジは野生の動物も多くて、さらに水がぬるっとしていたのが印象に残っています。ミネラルの含有量が多い硬水が流れる環境は、きっと良質な石を育む一因になっているのでしょう」

ライトニングリッジのオパールショーでは未研磨の石も販売している。

ライトニングリッジのオパールショーの様子。「カット石は色を深く出すためにテーブル面が低く、パビリオンが深いなど宝飾としては◎でもファッションジュエリーとしては過剰な場合もあるので、私のこだわりの部分でもありますが、日本でリカットを行う場合も。オパールも大きさ調整をしたいなどの場合は日本でリカットをかけます」

石好きのマロッタ忍さんがブランドのジュエリーとして石を使うようになった経緯や、オーストラリアで買い付けしたオパールなどの天然石を使ったジュエリーの話はインタビューの後編に続きます。


Profile 《talkative(トーカティブ)》マロッタ忍
グラフィックデザインの第一線を経験後、ジュエリーデザイン及び制作を学び、大手企業でジュエリーデザインの企画に携わる。JJAジュエリーデザインアワード新人賞、伊丹クラフト展審査委員賞を受賞するなど、グラフィカルでウイットの効いたデザインが注目を集めている。日本の量産向けのジュエリーと海外で見るアートジュエリーの間のような、カジュアルに身に着けられるファインジュエリーブランドがまだまだなかった2008年、グラフィックを学んでいた感性を活かして、この隙間のカテゴリーになれるようなジュエリーブランドをつくりたいと《talkative(トーカティブ)》を設立。
公式HP | http://www.talkative-jwl.jp/


Text by Naoko Murata




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