【連載】basic knowledge of Jewelry 特別編 – ジュエリーのお手入れについて


家で過ごす時間が増え、家中のお掃除などされている方が多いようです。そういった状況を踏まえて、今回は「ジュエリーのお手入れ」についてです。以前の基礎知識で紹介した内容も含みますが、改めてジュエリーのメンテナンスの知識 を身につけて、いざという時に楽しめるように準備しては如何でしょうか?

 

【ジュエリーの変色や汚れ】

ジュエリーに使用されている素材は様々。金属や宝石などの鉱物類・真珠などの有機質の素材、またそれらを組み合わせたものがありますが、全てに共通して変色や汚れは「着用後のケア」と「保管の仕方」によって左右されます。

ジュエリーは着用する際に直接肌に触れるものです。肌に触れるということは「汗」や「皮脂」などが付き、そのまま放置しておくと変色や汚れの原因となってしまいます。保管の仕方によっても変色などが起こります。

金属の種類によって変色のし易さは異なりますが、ほぼ全ての金属で起こりえる現象です。宝石類にもそれぞれの特性があり、注意が必要なものもあります。ということで、素材による変色の原因や特性にについてもう少し詳しくお話しします。

 

【素材別 変色や汚れの原因】

– シルバー製のジュエリー

貴金属の中でもシルバー製のジュエリーは、特に変色しやすいもの。これは銀の特性ですが、空気にさらすと「硫化」という現象が起きるためです。特に日本は湿気が多いせいか銀製品はすぐに黒くなってしまいます。この硫化という現象は、空気中だけでなく温泉などの硫黄を含むものに触れた時にも同様の現象が生じます。温泉で着けていたジュエリーが黒くなってしまった!という経験がある方も多いかと思います。

– ゴールド・プラチナ製のジュエリー –

基本的にゴールドやプラチナといった金属は空気中の酸素には反応しないのですが、着用時の汗や皮脂の汚れが空気中の酸素と反応して変色を起こす場合があります。また18金を始めとする金製品は、銀や銅といった他の金属も含有されています。最近はK10(10金)のジュエリーも多く、それらの混合されている他の金属が反応するためとも言われています。

– 宝石類 –

宝石は変色しない。と言いたい所ですが実はありえます。主にターコイズや、染色している可能性のある瑪瑙などの宝石。これらは直射日光や薬品などが変色や褪色の原因となり得ます。

他の天然の宝石も、直射日光に弱いものが沢山あります。中でもシトリン・アメシスト・クンツァイト・トパーズは光に弱い宝石といわれています。オパールは乾燥に弱い宝石です。保管時の乾燥には注意しましょう。

宝石のついたジュエリーを購入する際には、その取り扱いや保管に関して購入店であらかじめ聞いておくことも大切です。また、前回の基礎知識「basic knowledge of Jewelry vol.7 – Diamond / ダイヤモンド」でも書いたように、ダイヤモンドは油分との親和性が高く皮脂が付きやすい宝石です。

– 有機質の素材 –


「パール」「珊瑚」「琥珀」などは着用時の取り扱いも注意しましょう。鉱物系の宝石系と比較して表面に傷が付きやすく、汗や皮脂・水分などを嫌います。直射日光も避けなければいけません。これらの素材はシンナーやヘアスプレーなどにも影響されるので、薬品が付いたりすることも避けましょう。

 

【取り扱いの注意点とクリーニング】

日頃のジュエリーの取り扱いや実際にお手入れをする上で、以下の点はとても大切です。

・化粧品や薬品などが触れないようにする。
・着用後は柔らかい布などで汗や皮脂を拭き取る。
・着用したままの入浴や就寝は避ける。
・直接空気に触れないよう、専用のケースや袋にしまう。
・保管時に直射日光が当たらないようにする。

それでも汚れてしまったり変色してしまった場合はどうしたらよいでしょうか? ご自宅でも多少のメンテナンスが可能です。

– 地金(金属)のみのジュエリーの場合 –

シルバー製やK18の場合で、表面に光沢があるものは市販のジュエリークロスで磨いても良いかと思います。 (研磨剤入りでも可です。宝石には使用されないようご注意下さい。あくまで地金のみの場合です。)

市販のジュエリークロス。これは研磨剤は入ってませんが、研磨剤を染み込ませてあるものもあります。素材や用途によって使い分けます。眼鏡拭きなどでも代用できます。

重曹を使う方もいらっしゃるようです。(艶の感じが変わったりすることもあるので、試せるものがあればそちらで最初に試しても良いかと思います。)硬いブラシは使用せず、水をつけながら手で行うか、柔らかいブラシまたは布を用います。チェーンなどの細かな箇所の変色には便利です。必ず最後に流水で重曹をよく流し、水分をしっかり拭き取りましょう。


プラチナやホワイトゴールドは、表面にメッキが施されている場合があるので注意が必要です。シルバーやK18でも「つや消し」の加工がされているものは、研磨剤入りのクロスを使用すると光沢が出てしまうのでNGです。

写真左が艶消し加工のジュエリー

また市販のジュエリークリーナーに関してですが、汚れは落ちますが扱いを間違えると更に酷い変色を招く場合もあります。ステンレスのシンクなどにも反応してしまうので、周りの環境にも注意が必要です。心配なようでしたら購入したお店でクリーニングするのをお勧めします。

《まとめ》
・メッキなどの施されていないシルバー製品、K18、K10 などの素材はジュエリー用クロスなどで磨き直すことができます。
・メッキの施されていないチェーンは重曹に水分を含ませ柔らかいブラシや、手で汚れを落とす。
・プラチナ、ホワイトゴールド、メッキの施されたもの、宝石が付いたものは研磨剤の入っていない柔らかい布で拭くだけにする。

– ダイヤモンドなどの宝石と有機質の宝石 –

宝石がついたジュエリーは宝石と地金の隙間に皮脂などの汚れが付き、本来の輝きが失われてしまいがちです。ダイヤモンド・ルビー・サファイア等は、ぬるま湯(40°程度)に中性洗剤を入れ、柔らかいブラシなどで汚れを落とせます。

但し、エメラルド・オパール・ターコイズには中性洗剤は使用できませんので注意して下さい。その他、パールなどの有機質の宝石はお湯も洗剤も避け、着用後は柔らかい布で拭くだけにとどめておきましょう。刻印部分などの皮脂汚れを落とすのにも、ぬるま湯と中性洗剤は有効です。

 


 

ジュエリーは着用時の適切な取り扱いと着用後の保管で、綺麗な状態を長く保ちながら楽しむことが出来ます。

クリーニングされたジュエリーはやはり気持ちの良いものです。また保管方法も改めて見直してみて下さい。定期的なメンテナンスで大切な日に身に着けられるよう、準備してみては如何でしょうか。

 


Fumie Sasaki
Fumie Sasaki
佐々木史恵 Sasaki Fumie
東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 彫金 修了。卒業後、学校法人 水野学園 ジュエリーコース・シューズメーカーコース・バッグメーカーコースにてシニアコースディレクターを務め、2005年Sandberg Instituut/Amsterdamに交換留学生として在籍。現在は、東京藝術大学 彫金研究室勤務。ジュエリーブランド「jaren /ヤーレン」主催。
jaren HP | http://jaren.info

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