Moments in New York – Vol.4 「Melee the Show」後編

様々な展示会で賑わう2月のニューヨーク。そんな展示会シーズンを前に、昨年8月開催された、ファインジュエリーの展示会 “Melee the Show”の様子をお届けしている「Moments in New York – Vol.4」。

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“Melee the Show”は、主催者の2人がともにデザイナーということもあり、デザイナーがどのように自身のコレクションをバイヤーやプレス関係者に見てもらいたいか、バイヤーに良い買い付けをしてもらうためには、どのような環境を用意したらよいのか、また、ジュエリーのコミュニティーをより豊かで親密なものにしていきたいという想いがよく伝わる展示会です。

アメリカ国内のデザイナーの出展が大半を占める展示会ですが、ヨーロッパ、南米のデザイナーに加え、日本からもMonaka, Januka, Namが参加し、賑やかなアクセントになっていました。来場者も関係者のみに絞られているので、出展しているデザイナーにとっても、成果が見えやすいようです。

ハドソン川沿いの開放感あふれる会場に出展する65名を超える出展者の中から、後編では2人のジュエリーデザイナーにお話を伺っています。

 


Page Sargisson

ブルックリンの中でも、ボヘミアンな生活スタイルを好む人々が多く住むエリア、コブルヒルに店舗兼スタジオを構えています。カラフルなサファイアと、オーガニックな仕上げが特徴です。

 

—– あなたのジュエリーが持つたくさんの色、とりわけ、サファイアの様々な色味から、私たちはポジティブで幸せなエネルギーを受けとっています。サファイアのジュエリーをつくることへのあなたの情熱について知りたいです。どうして、サファイヤに魅了されるに至ったのか、とても興味があります。

Page:
最初に自分自身のジュエリー制作を始めたとき、仕上げのテクスチャーと色石に夢中で、トルマリンをよく用いていました。カラフルなサファイアをたくさんコレクションに取り入れるようになったのは、もう少し資金ができてからです。お客様も。その鮮やかさに、確実に、興味を持ってくださっていると感じます。

 

—– あなたがつくるジュエリーの仕上げは、オーガニックな雰囲気に満ちて、個人的な記憶を思い出させてくれます。とても親密な感じがします!どのようなインスピレーションがもとになっていますか?

Page:
私の祖父は木工家で、私が育った家具の多くを手作りしていました。あり継ぎの、釘を使わないとても複雑なつくりでした。彼は自宅の地下にスタジオを持っていて、そこで毎日制作に勤しむのが何よりも楽しみでした。

彼が、私に縫い方や彫刻の仕方、ヤスリのかけ方などを教えてくれ、それは面白いことに、彫金にも似ていたのです。それで、私がジュエリーの表面にヤスリの跡を残すのは、お客様が身につけた時、私のジュエリー制作過程と繋がりを感じられると考えているからです。

 

—– あなたのお店は、コブルヒルの力強いアイコンだと思います。コブルヒルに店舗を構え、地元のお客様やコミュニティと繋がりを築くことにどのような面白さを感じていますか?

Page:
店舗を通してお客様と直接繋がることが、どれだけ素晴らしいことなのか、出店するまで知りませんでした!私のキャリアのほとんどが卸中心で、お客様と直接コミュニケーションをとることがなかったのです。

でも今は、私のお客様の多くが、近所にお住まいです。子供たちと夕食に出かけると、私に気づき、あなたが私の婚約指輪をつくってくれたよ!なんて声をかけられます。同じ通りに女性が個人経営する店舗が多く並んでいるのですが、そのことが、この通りを素晴らしくしているとも感じています。

Page Sargisson | https://www.pagesargisson.com/

 


Yasuko Azuma

彼女の存在はとても貴重です。この記事のために、お話を伺うことになった時、実は、小躍りしました!ニューヨークでジュエリーに携わっていると話すと、彼女の名前が必ず出てくるのです。

ソルトアンドペッパーや雲のように白く不透明なダイヤモンドを、オーガニックなフレームとテクスチャーで包み込むようにリングするスタイルは、唯一無二のもの。そういったダイヤモンドを初めてダイヤモンドディーラーに見せてもらった時、Yasukoさんは今まで見たことのなかった、その魅力にひきこまれたそう。

そして、そのダイヤモンドを見せたダイヤモンドディーラーさえ、本当に買うのか?と驚いたそうです。所謂「変わった」ダイヤモンドをファインジュエリーとして美しく価値のあるものにした、その革新の功績は大きいと思います。

これだけのリング!喜びのため息!

彼女の「ダイヤモンドダスト」と呼ばれるテキスチャーは、チェーンにも美しく施されています。

今回お話を伺って初めて知ったのですが、Yasukoさんのジュエリーラインは、このチェーンから始まったそう。チェーンリンクは一つずつ、彼女の手によって作られているため、人気のため、制作が忙しくなりすぎた時、チェーンのコレクションをつくるのを辞めようと考えたこともあったそうです。それでも、彼女自身が好きだから、つくり続けた結果、今でもオーダーが入り続けています。

ディスクシリーズも人気。今回の展示会はホリデーシーズンに向けたものだったので、とりわけ、バイヤーの目にも留まっていました。

今までのバリエーションに加え、新たな大きさも加わっていました。様々な色の石が、柔らかな光を放って、絶妙なバランスで留められています。

ボリューム感のあるブレスレットは、シルバー台で、敢えてつくっています。手のぬくもりを感じる丸みあるシェイプ。

こちらのブレスレットも新作。軽やかに踊っているように連なったバゼルセッティングのダイヤモンドに、オリジナルのチェーンが組み合わさった。彼女ならではの要素が散りばめられており、贅沢の一言。

お話を伺おうとブースに向かったとき、お二人が並んで、イースト川を眺めながら写真を撮っていらしたのが、とても素敵な景色で、思わず写真を撮ってしまいました。

Yasuko Azuma | https://shop.shopyasukoazuma.com/

 


 

Melee the Show | https://www.meleetheshow.com/

Tucson:
2023年1月30日 ― 2月1日
The Stilwell House / 134 S 5th Ave, Tucson Arizona

New York:
2023年2月6日 ― 8日 10:00-18:00
The Lighthouse / Chelsea Pier 61, New York

 


Moments in New York – Vol.4 「Melee the Show」前編


Keiko Anzai
Keiko Anzai
安西啓子 Keiko Anzai
東京生まれ東京育ち、ニューヨーク・ブルックリン在住。 大学在学中より、インテリアやジュエリー店舗にて経験を積んだ後、ファッション分野に移り、バイヤーとして、地球の反対側まで新しい何かを探しに行っていた。 2016年よりニューヨークのジュエリー店舗店長として勤務後、2022年に独立。日米の様々なプロジェクトに携わりながら、自身のジュエリーショップ"ansun"もスタートした。
ansun | https://ansunnyc.com/

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