Thanks GivingとBlack Friday&Cyber Weekセールを前に慌ただしくもお買い物ムードで盛り上がる11月13日から19日の1週間、NYC Jewelry Weekが開催されました。
2018年から始まったこのイベントには、ニューヨーク中のジュエリー店、美術館、ギャラリー、教育関連施設などを拠点に、ニューヨークのみならず、全米中、世界中からジュエリーを愛する人々が集います。
美しく色づいた落ち葉の絨毯に祝福されながら、様々なイベントを取材してきました。前編では、日本とイギリスから参加の展示、そして、ニューヨークを代表するアートスクール、Pratt Instituteでのグループ展をご紹介します。
Invisible Thread
at The Jewelry Library / Diamond District
いしかわまり、嶺脇 美貴子、横内さゆみの3人の作家による巡回展が、NYC Jewelry Weekに合わせて開催されました。
タイトルにある「見えない糸」は、日々それぞれの場所で活動している作り手たちも見えない糸で繋がっている、というメッセージ。
ジュエリーにとって、触れることや親密であることが大切な要素ですが、パンデミック中それが難しくなってしまったことで、3人は話し合いを重ねた結果、川柳作家・嶺脇ルイ(嶺脇美貴子さんのお母様)の川柳とのコラボレーションによる作品づくりに至りました。
繋がりの核にあるのは「ことば」。会場内には、5つの川柳に3人がそれぞれに応えて制作した作品が並び、一つ一つが作品として成立していながら、一緒になることでより味わい深いコミュニケーションがうまれていました。
嶺脇ルイのインタビュー映像や、The Jewelry Libraryの蔵書の中からインスピレーションとなっている本を集めたミニライブラリー、そして、中央のテーブルには川柳の中から選ばれた20のキーワードがプリントされた色とりどりのリボンブローチが並び、来場者が好きなように選んで身につける。
川柳の「ことば」、ジュエリーの「ことば」、来場者の「ことば」のコミュニケーションを存分に体感したあと、私自身、ふんわりとあたたかさに包まれていました。
Adorned Resonance by Kassandra Gordon
at Gowanus Gallery by Larisa / Gowanus
British Councilの後援を受けて開催された、ジャマイカ系イギリス人であるジュエリーデザイナー&アーティストのKassandra Gordonの個展では、彼女が生まれ育ったカルチャーと共に、ジュエリーはパーソナルなものであり、自己表現であること、受け継がれていくものであることを力強く魅せていました。
ジャマイカ系移民の、そして、黒人文化のアイコンであるBraiding(編み込みのヘアスタイル)を、洗練された形で見事にジュエリーに落とし込んだコレクション。
彼女が影響を受け続けているレゲエや90年代カルチャーへのオマージュ写真作品が更にコレクションに奥行きを持たせ、見る側にも、自身のカルチャーとジュエリーとの関わりを考えさせるような一歩踏み込んだアプローチになっていました。
Pratt x NYCJW23
at Pratt Institute, Steuben Gallery / Clinton Hill, Brooklyn
ニューヨーク屈指のアートスクールで、ジュエリークラスにも定評があるPrattでは、在校生の作品と合わせて、ディレクターのPatricia Madejaとも繋がりの深いアーティストの作品も一堂に会した、活気ある展示でした。
17名の在校生の作品は、ブローチをフォーマットに、大賞だったSuah Choiは、Old Bay Seasoning(シーフード料理に使う調味料)の匂いに呼び起こさる、高校時代を過ごした海岸の街の思い出を作品にしていました。
Yifan Pengは、窓を見ること、窓をテーマにしたジュエリーが好きで、祖母の家の窓をブローチにすることにしたそうです。シルバーをベースに、黒檀も使われていました。
在校生の作品以外で目を惹いたのは、Andrea Ortizのコーヒー豆でつくられた作品たち。故郷コロンビアを思い出させてくれるものであり、朝、母が淹れたコーヒーの香りで目覚める大切な時間をも思い出させてくれるコーヒー豆を、心の支えの比喩として、アートピースのようなジュエリーに昇華していました。
様々な文化的背景を持つアーティスト、デザイナーが集まり、相互に作用してエネルギーの広がりをみせるのは、ニューヨークならではないでしょうか。後編では、Norita、Brooklynでの賑やかなオープニングナイトの様子をお伝えします。