Something Given

近藤健一さんの「七宝リング」

DSC_0004ジュエリーをはじめて手にしたのは、いつだったのだろう。それは宝石と呼べるものではないかもしれない。だが、小さくキラキラした大切なものをはじめて手にしたとき、きっと心躍ったに違いない。Jewelry Journalに参加するデザイナーたちが、はじめて手にしたジュエリー、のお話。

近藤健一さんは、七宝焼の手法を用いてジュエリーを作る。ポップなカラーと幾何学模様でモダンなデザインだが、金属の素地に七宝釉薬で色付けされ焼成することで、他の素材にはない焼き物独特の不思議な魅力を放つ。初めてのジュエリーということで見せてくれたのは、猿が何匹も連なり歩くモチーフの指輪だ。学生時代は金工を学び、伝統的な七宝焼の世界に入った近藤さんが、初めて自分の作品として作ったもの。有線七宝という、リボン上の薄い金属線で模様をつくり、その中に七宝釉薬を流し込むという非常に細かい仕事だ。このモチーフには、当時の思いが込められているそうで。
DSC_0040「大学卒業後に入ったところが七宝の会社で、朝早く会社に行って仕事以外の時間を使って2週間くらいかけて作った作品です。この猿のモチーフには、ちょっと自虐的な意味が含まれていて。当時、仕事は嫌いではなかったんですが、毎日毎日会社と家の往復をする、いつまで同じ生活が続くんだろうと悶々としていた時期で。同じところをずーっと周り続けている猿に、自分を重ね合わせていたんでしょうね。何かやりたくて、朝行ってYoutubeで音楽を聞きながら制作に没頭していました。当時は、いわゆる伝統的な七宝の細工がすごく好きで、こういう細かいのを作っていましたね。今やれって言われたら、ここまで細かいのを集中して作れる自信はないかも(笑)。今でもこのリングを見ると、当時のことを思い出します。制作に没頭した時間も含めて、このリングは思い出深い作品ですね」

DSC_0033近藤さんが、最初に作ったリング。猿がぐるりとリングの周りを歩きまわる。ひとつひとつ手作りでリボンを曲げて作っているので、すべての表情が少しずつ異なる。

DSC_0041メリーゴーランドのモチーフも当時制作したもの。ぐるぐるまわるモチーフに当時は興味があったとのこと。馬のたてがみひとつひとつも細かく色分けされている。

DSC_0032アトリエの様子。築100年以上の一軒家で住まいとアトリエを設けている。

DSC_0008近藤さんの作業場。ここでジュエリーの色付けを行う。

DSC_0009七宝釉薬。

DSC_0059色を塗る近藤さん。同じ色味でも、焼く日によって微妙に色が異なる。

DSC_0011窯。温度は800度。アクセサリー類の小物だったら1分ほどで焼き上がる。

DSC_0050道具たち。

DSC_0030このランプシェードも七宝製だ。近藤さんは、最近ジュエリーだけでなくランプシェードや酒器等のテーブルウェアも製作をしている。

近藤健一さんの「七宝リング」

Profile

こんどう・けんいち/
http://www.kenichikondo.com/

CREDIT

Photo: Tomo Ishiwatari
interview & text: Keiko Kamijo

Something Given

母から受け継いだ婚約指輪。祖母からもらった帯留め等、ジュエリーは世代を超えて受け継がれていくものです。jewelry journalに参加しているデザイナーさんたちに、ジュエリーとの出会いについてインタビューしました。

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