一針一針計算された美しさと大人へのメッセージ Moko Kobayashi

JJ:
まずは、ジュエリーを作り始めたきっかけを教えてください。

小林:
もともと日本でパタンナーをやっていた事もあり、このオートクチュール刺繍に出会ってからはじめは洋服やドレス等に刺繍することを目標にパリでウエディングのアトリエなどで活動していました。

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この刺繍はフランスに古くから伝わる伝統技術で、オートクチュール界に欠かせない特殊技術として職人達によって発展してきたもの。何百時間もかけて職人によって施される刺繍は圧倒されるほど素晴らしい。

ただこの刺繍を仕事にしていくにあたって、その身につけた技術が一番発揮出来るところはやはりオートクチュール界で職人として仕事するしかないと感じたことです。また、私の中で刺繍の手芸的な所、お花や蝶蝶等のありふれたモチーフに少し抵抗もありました。

その様に考えている頃、画家である大月雄二郎氏に出会い、物作りに対する考え方が一致していたことから、コラボレーションとして彼の作品を刺繍で作るということになりました。

刺繍とは関係のない作家さんとの接点を持つ事により、試行錯誤を繰り返した結果、分かったことは技術を見せるというより、テクニックは当たり前の基礎にあるうえで、デザインや色で勝負する作品づくりでした。

この活動が、私が刺繍に対して持っていた違和感や抵抗が何だったのかをはっきりさせるきっかけになったと思います。

何年か大月氏との作品制作とドレス等に刺繍する本来のオートクチュール刺繍の活動を同時進行していくうちに、自分らしく思った通りにやろうという度胸がつきました。そして自分でも普段からファッションに取り入れられるオートクチュール刺繍の作品を作ってみようと、ジュエリーをつくりはじめました。

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JJ:
刺繍が原点にあるビーズのジュエリーだからこその、クオリティの高さなんですね。小林さんの表現は、かわいいだけでなくちょっとシュールなモチーフでありながら、大人が楽しめるものになっていると思いますが、こういったジュエリーをつくられているのはどうしてなのでしょうか?

小林:
もちろん自分が好きな感じ、面白いと思うモチーフを作る事は前提にありますが、気を付けているのは、ビーズやスパンコール等のパーツは色や形、大きさ、光り方等、その物自体が既に奇麗で可愛いものなので、デッサンをあまりデフォルメしてしまうと幼稚になってしまうことです。なるべくリアルな線を入れたりして、面白さの中にも大人な部分を残しています。

またアンティークビーズを使う事によって色を落ち着かせたりしていることも、ポップにならない要因になっていると思います。

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JJ:
新しい作品をデザインされるとき、つくりはじめるときは、どういったプロセスをたどることが多いですか?

小林:
主に1930年代の極小アンティークビーズを使っているため、まず材料探しからはじまり年2回パリへ買い付けにいきます。

その後デザインに入ります。ビーズは絵の具の様に色を作る事が出来ず、サイズも種類によってそれぞれ違います。粒の大きさによって、例えば顔は何粒で表現できるかを考えたり、金属とは違い、ある程度の太さがないと壊れやすくなるため、モチーフとしての強度などを念頭においてデッサンします。

デザインが決まったらその後はひたすら刺繍し、最後に裏の加工をします。裏の加工は奇麗に納得いく様に仕上がるまで独自で沢山研究実験を重ねてきました。全ての工程をアトリエで制作しています。

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JJ:
素材を見つけてきて、限られた素材にあわせて表現をしていく中で、あの作品たちの表現が出来上がっていくというのは、小林さんのセンスがありすぎるとしか思えません笑。インスパイアになるものがあったりしますか?

小林:
特にないのですが、その時の気分や季節、思いついた事、見たもの、あまりジュエリーにないモチーフ。最近はスタッフの皆とこんなモチーフがあったら面白いとか会話の中で生まれる事も多々あります。

JJ:
表現を完成させる中で、いつも大切にしているポイントはなんですか?

小林:
ちょっと笑えるモチーフ、形、表情、言葉をヒントにするようにしています。

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JJ:
2月15日(水)からはじまる、Pop-up Store @ HANKYU UMEDA で販売される作品に関して教えてください。

小林:
特にこれまでの作品と流れは変わっていませんが、これも昨年末から出し始めたフランスジェットという珍しいパーツを使った幾何学模様のブローチも登場します。

昨年末個展をした時に、新作の数をあまり作れず、お買い求め頂けなかった方もいらっしゃったので、今回はなるべく新しい物を多く作るようにしました。

JJ:
シーズン毎に発表される作品の中で、毎回特に思い入れの強い、おすすめのものがあったりしますか?

小林:
このジュエリーは見る方の好みによって選ばれるものが違うので、おすすめのアイテムというよりは皆さんそれぞれのお気に入りを見つけていただけたら嬉しいです。

普段にも特別な時にでも身に付けられるジュエリーだと思っています。男女問わず幅広い年齢層の方に見てもらいたいです。

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形を捉える部分は感覚的でありながら、同時にとても丁寧なものをつくる姿勢が印象的だった小林モー子さん。

一粒一粒、計算された上で表現されたジュエリーたち。是非手にとって、日常にも非日常にさりげないきらめきを取り入れてみてはいかがでしょうか?

interviewed by Midorikawa Hiromi

 


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