世界が注目するスペイン発の《 MISUI 》 クリエイティブディレクター Marc Monzó インタビュー

2015年にスペイン・バルセロナの老舗ジュエラー《Unión Suiza(ウニオン・スイサ)》が創業175年を祝して立ち上げたオリジナルブランドの 《MISUI(ミスイ)》。世界で活躍するアーティストと手を組み、伝統と革新を融合したハイエンドなコンテンポラリー・ファイン・ジュエリーを提案し、スペイン本国をはじめ様々な国で注目されています。

日本では11月6日より伊勢丹新宿店本館1Fでポップアップストアを開催し、その後12月11日に同百貨店に旗艦店がオープンするということで、さらにグローバルなブランドへと進化するに違いありません。今回はクリエイティブ・ディレクターを務めるMarc Monzó(マーク・モンゾ)さん にインタビュー。彼自身のデザインマインドやMISUI にかける思いについて尋ねてみました。

LIGHT/BEAM

JEWELRY JOURNAL(以下、JJ):ジュエリーアーティストとして20年以上のキャリアをお持ちですが、この世界に進もうと思ったきっかけは?

Marc Monzó (以下、MM):19歳の時、母国スペイン・バルセロナにあるマサーナ美術学校でワークショップを受講したのが、ジュエリーの世界に入ったはじまりです。当初は違うプロダクトが目当てでしたが、受講生が限られたスペースで小さな道具を使いジュエリーづくりを学ぶ様子がすごく楽しそうに見えて、直感で自分はここでやってみたいと。どちらかというとジュエリーというプロダクトよりも、小さな限られた規模でクリエーションをしてみたい気持ちのほうが強かったです。でもまさかジュエリーの世界に進むとは将来のプランに全然なかったので、自分自身が一番驚きましたね。

JJ:自分らしいクリエイションとは? それにたどり着くまでに影響を受けたものはありますか?

MM:インスピレーション源やデザインのアイディアは新しいクリエーションに取りかかると湧き上がってきます。自分の世界観に違和感なくフィットする時もあればそうでない時もありますが、自分が思い描くビジョンを欲している時にいかに具体的に出せるかが、自分のクリエーションにおいて大事にしていることです。それと、学生時代にジュエリーと並行して音楽も学んでいて、自分はフルートとトランペットをやっていましたが、もしかしたらそういった要素が自分の作品にどこかで影響しているかもしれません。

JJ:これまで手がけてきた作品の中で特に思い入れのある作品、またはエポックメイキング的な作品はどれですか?

MM:選定することはできません。というのも、初期の作品を含めて全てに思い入れがあるからです。どれも過去の作品にとらわれずベストを尽くしたなど、それぞれに誕生秘話があります。

FRUITFUL

JJ:日本によく訪れていると聞きますが、初訪問はいつですか? 日本の魅力とは? 好きなデザインや場所があれば教えてください。また日本からインスピレーション源を得ることはありますか?

MM:「1mm」という個展を東京のギャラリー ドゥ ポワソンで開催するために来日したのが最初、2007年です。当時のことは今もはっきりと覚えています。日本はいつ訪れても居心地がいいですね。日本語で理解できないことがあっても文化や日々の生活で共鳴する部分があり、建物や庭園、通り、車、花、木といった街の光景も、自分にとって大事なインスピレーション源になっているのは確かです。日本は独特のサイズ感やバランスのとり方があり、環境はもちろん、行動や思考に違いがあることを気づかせてくれます。

最近は西洋の様式を取り入れた日本の伝統的なスタイルに心がときめきます。東京・白金台にある庭園美術館の建築や植栽がまさにそうで、目に映る光景は西洋なのに日本らしい調和がとれていてすごく興味深いです。

JJ:ご自身のクリエイション活動と並行して《 MISUI 》のクリエイティブ・ディレクターを務めていますが、就任した経緯と理由を教えてください。

THIRD SPIRIT

MM:5年前にJoan Gomis(ジョアン・ゴミス/ 《 MISUI 》ディレクター)と一緒にジュエリーの新しいプロジェクトを立ち上げようとしていて、どの方向性に持っていこうか模索していました。その頃、自分はファインジュエリーの技法や素材を用いた表現方法を探っていたので、ちょうどタイミングが合って《 MISUI 》のプロジェクトに参画することに。ジュエリーの小さな規模感でどんな世界観を築くか、そのアイディア出しに夢中になりました。

JJ:マーク・モンゾさんにとって《 MISUI 》の魅力とは?

MM:《 MISUI 》のコレクションにはいくつかの共通点があります。物質的でコンセプチュアルな構造を持った芸術的に美しいプロダクトとイメージで構成されていること。後付けはNG。そしてどのように構成したのか、最小限にてらうことなく説明できること。メッセージ性のあるジュエリーをつくるけれど、それを明確にしないこと。メッセージは身につけるお客様に委ねたい。《 MISUI 》のジュエリーと身につけたお客様の生活が合わさることでメッセージが伝わると思います。

AUGUST

JJ:《 MISUI 》のクリエイティブ・ディレクターとして心がけていることは?

MM:アーティストや職人たちの声に耳を傾け、彼らの思いとブランドが必要とするもののバランスをとること。ジュエリーの表現方法を具体的な形にすることも大事にしています。

JJ:ご自身と《 MISUI 》のそれぞれのクリエイション活動を行う際、どのようにして頭の切り替えをしていますか?

MM:《 MISUI 》のデザインを考える時と自分のデザインを考える時に違いはありません。素材や要素などの関係性や約束事は同じ。もしかしたら《 MISUI 》のほうが生産する前にコレクションを徹底的に分析する必要性があるかもしれませんが、熟考と計算は絶対不可欠です。

JJ:これまで手がけてきた《 MISUI 》の中で、特に思い入れのある作品やエポックメイキング的な作品はどれですか?

MM:まだデビューして日の浅いブランドなので、数年後、その質問に答えられるようにしたいです。

LEAF

JJ:《 MISUI 》で手がけた最新作について教えてください。

MM:初めて取り入れる圧縮成形という技法を用いてつくったのが、最新コレクションの「LEAF」です。フォルムは植物からヒントを得て、ギリシャなど古代の文化を取り入れながら、未来に向けたメッセージをジュエリーに落とし込んでいます。シンボリズムな考え方と、精製して繊細に仕上げたゴールドのそのものの価値。その両方を絶妙に併せ持ったコンセプチュアルなコレクションです。

JJ:《 MISUI 》ではアーティストや職人、店舗スタッフなど様々な人たちと関わっています。その中で気づいたことや感銘を受けたことがありますか?

MM:ジュエリーに関わる人たちは小さな環境で小さなプロダクトに集中しながら作業をしています。孤独はつきもの。けれども《 MISUI 》に関わって気づいたのは、チームとして活動し、お互いのことを確認できる環境になっていることです。デザインチームの場合、個人ではチャレンジできない素材や技術に触れられる機会があるのも大きいと思います。

JJ:最後に、ご自身と《 MISUI 》のこれからの展望を教えてください。

MM:コレクションを積み重ね、ジュエリーのクリエイション活動が継続できるように、バリエーションに富んだデザインのプラットフォームを構築させていきたいです。


Profile Marc Monzó (マーク・モンゾ)

スペイン出身のジュエリーアーティスト。1998年から個人の活動を始め、国内外の美術館に作品が収蔵されるなど高い評価を得ています。2015年、スペインの老舗ジュエラー《Unión Suiza(ウニオン・スイサ)》が立ち上げたオリジナルブランド《 MISUI 》のクリエイティブ・ディレクターに就任。2016年、ヨーロッパのコンテンポラリー・ジュエリー界では最も栄誉のある「フランソワーズ・ヴァン・デン・ボッシュ賞」を受賞しました。

Marc Monzó | https://www.marcmonzo.net
MISUI | https://www.misui.es


INFORMATION

《 MISUI 》POP=UP STORE
期間:2019年11月6日(水)〜11月12日(火)
場所:伊勢丹新宿店本館1F=アクセサリー / 東京都新宿区新宿3-14-1
URL:https://www.isetan.mistore.jp/shinjuku.html

バルセロナ発《MISUI》POP-UP STOREにマーク・モンゾが来店 − 伊勢丹新宿

《 Marc Monzó 》個展「Gate」
期間:2019年11月8日(金)〜11月24日(日)
場所:ギャラリー ドゥ ポワソン / 東京都渋谷区恵比寿2-3-6
URL:http://www.deuxpoissons.com

スペインのコンテンポラリージュエリー界を率いるマーク・モンゾの新作を発表 − 恵比寿

《 MISUI 》旗艦店
2019年12月11日(水)オープン
場所:伊勢丹新宿店本館1F / 東京都新宿区新宿3-14-1
URL:https://www.isetan.mistore.jp/shinjuku.html


Text by Yoko Yagi
Photo by MISUI




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