伝統の技、職人の技巧が宿るジュエリー特集 – 後編

ジュエリーという小さな小さなピースは、デザイナーの想いとクリエイティビティが詰まったアートのようで、着用するのはもちろん、眺めているだけでもその深い世界観に魅入られることがあります。

その想いやイメージを伝えるためのデザインはもちろんですが、それを具現化するために、デザイナーは様々な技法を模索し、時に匠とも呼ばれる職人と手を取り合い、大切なピースを完成させます。

伝統の技、職人の技巧が宿るジュエリー特集 – 前編」に続き、後編では日本のみならず世界の土地に根付くはめ込み細工の技術や、山梨を代表する宝石彫刻の匠の技を駆使した作品に焦点を当てています。


貴石彫刻の伝統技術が生み出す《bororo》の究極デザイン

天然石に見られるインクルージョンや気泡は、その天然石の辿った歴史により愚発的に生まれた奇跡の模様。その天然石のまるで小宇宙のような世界を覗くというのが《bororo(ボロロ)》の人気アイテム「ロックリング」のコンセプトです。

その究極の世界を魅せるため、絶対的な技術が不可欠としてデザイナーがタッグを組んだのが山梨県甲府市の詫間宝石彫刻の伝統工芸士、詫間康二氏。詫間康二氏が考案した立体同摺りの技法を用いることにより、唯一無二のリングが完成しています。

制作の際に最も時間がかかるパートは、実は石のどの部分をどう切り取るかを考える「石取り」だそう。結晶の方向や内包物の入り具合をデザイナーと伝統工芸士で話し合い、注意深く観察。一つのリングを生み出すのに、そこまで考え抜かれているその想いに脱帽します。仕上がりの美しさに、同業者も唸るのにも納得がいく逸品です。

Emerald Mini Rock Ring (Round) ¥550,000 | https://culet-web.shop/?pid=167865615

その他、Rock Ringはbororo ONLINE STOREでも多数ラインナップされていますので、ぜひご覧ください。


《moca.arpeggio》「はめ込み細工」の技法が生み出す羽の宝石

羽の最も美しい部分を切り取り、金属に「はめ込む」ことで、宝石のような表現を施した《moca.arpeggio(モカ・アルペジオ)》のリング。「カワセミ」の羽をはじめ、モノトーンのカモの羽や孔雀のグリーンの羽も使用され、自然の生み出すアーティスティックな柄や色に思わず目を奪われてしまいます。

この技法は古く中国美術に存在する技法と同様だそうで、中国でもTianTsui(點翠)というカワセミの羽を、古来から頭飾り、首飾り、ファンやスクリーンに至るまで、美術品や装飾品としてはめ込み、使用していました。世界を渡り広がった技術がその土地のデザイナーによって新たな作品を生み出す、そんな心温まるストーリーを背景に持つジュエリーもまた魅力です。

inlayリング(カモ) ¥22,000 | https://moca-arpeggio.stores.jp/items/5eded43b5157627a9df8c76c


日本独自の技術を現代に《ATENARI》の「蒔絵技法」

ブランド設立の2007年より、蒔絵技法を生かしたジュエリーをデザイン製作する《ATENARI(アテナリ)》。漆の利用は古くからアジア広域で一般的ですが、細やかな蒔絵技法は日本独自のもので、平安時代にその基礎が確立、華やかな仕上がり、表現の幅の広さから、江戸時代には装身具に多用されてきました。

こちらのピアスは南洋真珠の表面をいっぱいに使い、アルファベット一文字を蒔絵加工したもの。純金の粒をライン状に並べる技法を使っているため、光が乱反射してさりげなく輝きます。バロックがかったシェイプの真珠を使い、唯一無二の1ピースに仕立てたシングルピアス。個性溢れる一品は、他にないギフトとして選びたいですね。

イニシャル柄シングルピアス「M」¥19800 | https://shop.atenari.jp/items/44001734
※現在「A」「R」「N」も販売中、オーダーはオンラインショップから相談可


《ManiheeL JEWELRY》紀元前3000年にまで遡る「ストーンカメオ」

天然石に彫刻を施す「ストーンカメオ」。グラフィックデザイン、現代美術を学んだ後、イタリアフィレンツェのジュエリー学校でジュエリーを学び、カメオに興味を持っていたデザイナーが白蝶貝を彫ったのが《ManiheeL JEWELRY(マニヒール・ジュエリー)》のストーンカメオの始まりだそう。

天然石に一点一点施される、アーティスティックな凸型の浮き彫り。さまざまな先端工具を付け先端部分を回転させて、研磨や切断・磨きなどを行うことができるハンドリューターという工具を使用し、ルースの彫刻から磨きの仕上げまで一貫してデザイナーが制作しているそうです。伝統的なものは、長い歴史があるゆえに重厚感や、古典的なイメージがあるため、《ManiheeL JEWELRY(マニヒール・ジュエリー)》では「Rock&Classic」をテーマに現代のファッションに合うようコーディネートもあわせて提案しています。紀元前3000年にまで遡る技術を、今身につけて楽しむこと自体がもう、個性的ですね。

YUNICO | ONYX《1点物》 ¥286,000 | https://maniheel.stores.jp/items/618ce54d7d5d8106401cf207


 

ジュエリーという小さな世界に詰まった、世界の歴史とそれにより大切に紡がれてきた伝統や想い。

その背景を深掘りする機会はあまりないかもしれませんが、このように伺ってみると、改めて完成までにどれだけの技術とセンスが掛け合わされ、創り上げられているかに脱帽させられます。

海を越え、渡ってきたその足取りも感じながら、ご自分ピッタリの一品を、そして大切な方へのギフトとして選ぶ際にも参考にしていただければ幸いです。


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