エモーショナルなジュエリー Vol.13「エイシャ・ベイカー」

Alcazar Ring | 18K gold, diamonds, emeralds, rubies, sapphires, tourmaline


「現代のおとぎ話」をコンセプトに、独特な世界観を構築しているジュエラー、エイシャ・ベイカー。2017年の創業にも関わらず既に世界的知名度を誇り、まさしく飛ぶ鳥を落とす勢いという表現が相応しいこのジュエラーを今回はご紹介する。

エイシャ・ベイカーを語る上でまず触れておきたいのは、このジュエラーはエイシャ・ベイカーとフーニック・チャンという二人の人物によって成り立っているという点だ。勿論そのようなジュエラーは他にもあるのだが、どちらか一人がクリエイティブ面を、もう一人がビジネス面を統括するというケースが一般的だ。しかしエイシャ・ベイカーがユニークなのは、エイシャとフーニックは非常に親しい友人同士で、二人のコラボレーションによって作品が生み出されている点だ。

クリエイティブ・ディレクターのエイシャはアラブ首長国連邦出身。幼少の頃からファッションが大好きで、アートコレクターでもある。デザイン・ディレクターのフーニックは韓国出身で、彼の姉とエイシャが親しかった事から二人は出会った。雨が降るロンドンのカフェで、当時Central Saint Martinsを卒業したばかりだったフーニックは自分のデザインをエイシャに見せた。意気投合した二人は将来のヴィジョンを共有するに至り、数ヶ月後にはフーニックがエイシャの住むドバイに移住して、エイシャ・ベイカーが立ち上げられた。

left : The Majesty Earrings | 18K gold, diamonds, citrine / right : The Wild Ring | 18K gold, emerald, ruby, pink and yellow sapphire

彼らのファーストコレクション「Mirror, Mirror」は、瞬く間に注目を集めた。「Mirror, Mirror」とは「鏡よ鏡」という意味で、白雪姫に出てくる魔女が魔法の鏡に語り掛ける、お馴染みの台詞だ。白雪姫は国を問わず広く知られる童話だが、原作をそのまま再現しているのではなく、エイシャとフーニックの独特な解釈による表現が興味深い。一年を費やして制作されたという冒頭画像の「Alcazar Ring」はキューブの集合体でアルカサル城が表現されており、斬新な表情が際立つ。

何ともユニークな方法でシトリンが留められている「The Majesty Earrings」や、魔法の花園を表現した「The Wild Ring」など、これまで他に無かった造形のインパクトが際立つ。多用されている色彩豊かなエナメルも、現代的なフレッシュさを感じさせる。

エイシャとフーニックはどのようにしてコラボレーションを行うのか、それぞれに特定の役割があるのかを尋ねてみたところ、フーニックはこのように答えた。「僕達はしょっちゅう一緒に買い物に行ったり食事に出かけたりしていて、二人の会話が自然と作品へのアイデアに繋がっています。エイシャは洋服とジュエリーを沢山収集していて、僕は彼女のセンスが大好きなので、僕にとって彼女の存在はミューズの役割を果たしています。デザインはエイシャと二人で色や形のディテールを細かく決めていきます。デザイナーとコレクター(着用者)というそれぞれの目線から、最も良いソリューションを見つけて作品にしています。」ちなみに「Mirror, Mirror」コレクションにはネックレスが無いのだが、これはミューズであるエイシャがあまりネックレスを着けない事によるそうだ。

left : Dreampedia Ring | 18K gold, diamonds, mother of pearl, enamel / right : Fantazia Ring | 18K gold, diamonds, white quartz

惜しみなくボリューム感や立体感を表現する二人のテイストは以降の作品にも反映されているが、大胆なデザインが映えるのは、細やかで確かな技術力があってこそだろう。本をモチーフにしている「Dreampedia Ring」は、実際にページをめくる事が出来るのが嬉しい驚きだ。「Fantazia Ring」は一見、大きなクォーツ一石を地金の枠の中に収めているように見えるのだが、近付いてみると実は多数の石が隙間なく留め上げられて構成されている事に気が付く。

エイシャ・ベイカーの作品には、優れたジュエラーに不可欠であるオリジナルな美的感覚と高い技術力が既に備わっている事を見て取れる。若さと創作意欲に溢れる仲良しの二人組は、これからもユニークな作品を生み出していく事であろう。彼らの活躍に今後も注目していきたい。


画像・資料提供
Aisha Baker | http://aishabaker.com


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