いくつになっても心の中に持っている乙女心に響くように simmon

JJ:
早速ですが、佐藤さんはジュエリーと関わることになったきっかけから教えてください。

佐藤:
僕の場合は、ちょっと変わっていて、まずは母が行き始めた彫金教室に一緒にいったのが、きっかけだったんです。なんとなく、そのときに一生こういうことに関わるんだろうなって、思いました。15歳のときです。

JJ:
え?!15歳の彫金教室スタートとは、すごいですね。元からものづくりは好きな方だったんですか?

佐藤:
はい、絵を描いたり、何か手を動かすのは好きな方だったので、それで母が連れ出した、っていうのはあるかもしれませんね。母自身も、いろいろものづくりに興味があったようで。それから、頻繁ではなかったんですが、定期的に楽しみながらつくりたいものをつくって、彫金の基礎を学んで。そのあと、今度は課題をこなして技法を身につけるような、教室に移って、また学んで。20歳で、職人として仕事をもらうようになりました。

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JJ:
センスがあったからこそ、とんとんと進んだってことですよね・・・。職人としての仕事って言うのは、デザインが決まっているものを作るというものだったのですか?

佐藤:
はい。それで、工房にいる空いた時間で、自分のデザインしたものをつくったりもさせてもらっていました。

JJ:
自分のつくりたいものをつくるというのは、自然に取り組めていたわけですね。それから、今のご自分のスタイルにたどりつくまでは、どういう道を辿ったんでしょうか。

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佐藤:
元からお洋服がすきだったのもあって、洋服にあわせてつけられるものを、と思って作っていました。当時は、今のデザインより、落ち着いた感じというか、メンズ寄りのユニセックスなイメージのものをつくっていました。アクセサリーや雑貨を取り扱うお店に置いてもらったりしていて、男っぽいデザインなのに、女の子が買ってくれていたようで。そこから、もっといろいろ学びたい!と思って、ヨーロッパ・・・ドイツにいきました。

JJ:
ドイツ、ですか。今の雰囲気とはちょっと違いますね。

佐藤:
そうなんです笑。でも当時、JIRO KAMATA の治朗くんがドイツにいたんですね。彼の作品を見たときに、自分の進みたい業界に、こんなに自分の好きな世界観に通じるものをつくってる人がいるのかと感動してしまって、どうしても会いたくなって。たまたま知り合いにつながりのある人がいたので、訪ねてミュンヘンにいきました。それから、アートジュエリー専攻の学校も見て回って、アントワープまでいきました。

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JJ:
ミュンヘンといい、アントワープといい、どちらも、自然な流れでいきつくところではない気がしますが、、憧れた人に、すぐ繋がれたこと自体も、ラッキーボーイ笑。

佐藤:
そうですね、ありがたいことに笑。ミュンヘンでは、アートジュエリーの教授に作品を見せたりするチャンスまであって、学ぶことがたくさんあるといわれました。技術もそうだし、“アート”であるということがどういうことなのかとか。でも、その“アート”である、っていうことが妙にしっくりこなくて。いろいろ見たからこそ、自分はもっとファッションに近いことをやりたいって思って、帰ってきちゃったんですよね。

JJ:
ファッションに近いというのは?

佐藤:
作品として形の美しさを鑑賞してもらうというより、もっと、身につけることを前提に自分のジュエリーは手に取ってもらいたいと思ったんですよ。ジュエリーが“アート”であるというのは、ただ自由につくるというのとはまた違って、その中にもルールがあって。それでいて、身につけるものとしてデザインするというのとはまた違っていたので、ファッション・お洋服の延長として存在する方が、しっくりきました。

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JJ:
確かに、日本は今でこそ、アートジュエリーのカテゴリーのデザイナーさんがたくさん素敵なジュエリーを発表されていますが、海外でいうアートジュエリーカテゴリーとは、考え方や見え方が、少し違うところがありますよね。でも、身につけてどう、という方がやっぱり健全だと思います!ジュエリーは。

佐藤:
そうなんです。僕もそう思って。それで、今度はそういう風にものをつくってブランドとして成り立っているところを探して、自分に合った所で2年間勉強させてもらいました。

JJ:
ジュエリーの作り方としては、どのようにつくっていらっしゃるんですか?

佐藤:
頭の中にあるデザインを実際につくってみて、そこからまたブラッシュアップしていくというやり方をとっています。頭の中でああでもない、こうでもないと考えて、これだ!とまとまった時点で、手を動かしていきます。スケッチしてから手を動かして、というのは、結局実作してみないと気がつかない点にぶつかったりするので、あんまり効率がよくないんですよ、僕の場合。

 

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JJ:
では、スタートするときも、イメージスタートですか。

佐藤:
はい。いつも、なんとなく頭の中に次に作りたいものがあるんですが、最初にテーマを考えて。テーマに合う雰囲気のものを頭の中で何度もイメージを重ねる感じですね。メモしたりもしますけど、それも短い言葉で忘れないように書いておくだけというか。

JJ:
今回の新作のテーマは、“mother”ということですが、これも同じようにテーマからイメージを重ねていったのですか?

佐藤:
はい。今回は、アンティークのように、時代を継いでいくようなジュエリーのイメージのものをつくりたくて、テーマを“mother”にしました。そこから、作りたいものを形にして、生まれましたね。

JJ:
イメージしたときから、柔らかくなつかしいような、でもsimmonらしい新しさの出ているシリーズだったんであろうことが伝わってきました。でも、すんなり出てくるのがすごいですよ。作りたいものを形にしていって、って一言にしてしまえば簡単なようですが。

佐藤:
笑。頭で思い描いた、イメージ通りのものができたときがやっぱり一番いいですね。

JJ:
完全に、自分の作りたいものを形にしていく作業なんですね。作りたいものって、自然と湧いてくる感じですか?インスパイアされるためにしていることがあったり、しますか?

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佐藤:
特にないんですけど、頭が空っぽのときの方が圧倒的にいいイメージが浮かんでくることが多いので・・・音楽は常に好きなものを延々ループでかけていたりします。

JJ:
作りたいもののイメージが枯れないっていうのは、アーティストとしての才能ですね。もっと、つける人をイメージして、それをヒントにデザインしているのかと思っていたのですが。でも逆に、具体的な誰かをイメージしているんでないからこそ、simmonのブランドカラーよりも、アイテム自身に主張があるのかもしれません。

佐藤:
そういってもらえるとうれしいです。どちらかというと、simmon はこうじゃないといけないっていうのはあんまりなくて、むしろいろいろあっていいと思っています。子供からお年を召した方まで、心の中に持っている乙女心に響くように、というのだけが共通点です。

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JJ:
その幅、とても面白いです。つける人をブランドで縛るわけでもなく、ひとつひとつで勝負しているというか。しかもそれが、佐藤さんがつくりたいものを作ってるっていうのが響いているのも面白い。職人としての経験を積んでいるからこそ、イメージしたものを実現する技術がある訳ですし・・・なんだか必然的にここまで来た感じですね。

佐藤:
ありがとうございます笑。できるだけたくさんの人に見てもらいたいし、つけてみてもらって、乙女心をくすぐっていきたいです。新しい試みとして、ひとつずつパーツをお客様の好みに合わせて選んでもらえる様な商品も用意していて。こうやって、キャンディBOXからすきなものを選ぶのとかって、楽しいかなと思ったんです。

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JJ:
いや、それ、絶対楽しいですよ。迷うけど、このラインナップだったら、絶対すきな、ピン!とくるものがひとりひとりにやってきますから、楽しくてしょうがないと思います。その他、今までやったことのないことで、取り組んでみたいことはありますか?

佐藤:
そうですね、もっと大きいものとか・・興味あります。

JJ:
なんだか、さっきから思っていたんですけど、モノ作りの思考が、彫刻家の方みたいですよね笑。

佐藤:
そうかもしれません笑。そういえば子供の頃から、形あるものは一旦壊して組み直してみたいし、逆に形をつくる可能性を秘めたものは、形にしたいというか・・・

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JJ:
絵描きさんとも、建築家とも違うものの作り方やその思考は、どこか彫刻家のようです。そう考えると、大きい作品も、是非見てみたくなってきました笑。

佐藤:
何か機会があったら是非取り組んでみたいですね!

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しっかりと方向性を捉えているアーティストのような目線と、子供のようにつくりたいものに対してただ純粋にわくわくしている様子のギャップが、魅力的でした。

なかなかジュエリーをセレクトすることのない、NYのMoMAデザインストアでもお取り扱いがはじまったそうで、今後の彼のもの作りからますます目が離せそうにありません。

interviewed by Midorikawa Hiromi


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