丁寧で気持ちのよい手仕事と、リズムよく深まっていく作品性:Stitch

JJ:
JJインタビュー初の2回目登場ということで、今日はよろしくお願いします!
早速ですが、最近作られているものを拝見させてください。

石渡:
はい、よろしくお願いします。今年の春は「シルバー、モノトーン、ペールブルー」が私の中のテーマカラー。身につけた時にさわやかで晴れやかな気分になれるものを、と思ってつくった新作です。

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JJ:
美しく整った、しつらえのよい手仕事を感じますね・・・ブローチも軽くて、つけやすそう。

石渡:
そうですね。ボリュームは大きいですが、ピアスやイヤリングよりもブローチは、年齢層も幅広く、選んでいただきやすいアイテムなんじゃないかと思います。

JJ:
肌理のそろった刺繍の糸の並びが、美しい。糸の柔らかな感触も見て伝わってきます。つい、触りたくなっちゃう笑。そういった柔らかな感じが、貴金属や天然石のジュエリーが並ぶ中で、目を引く展開になっておられるのだと思うのですが。

石渡:
そういっていただけるとうれしいです。やっぱり、使う糸が違うと表情は違って見えて、刺繍糸としてポピュラーなコットンの糸だとちょっとカジュアル。シルクの糸だと、エレガントになりますね。

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JJ:
同じ刺繍糸と言えど、やはり素材が持つ力はとても強いということですね。前回のインタビューでも、お話を伺っていますが、石渡さんにとって創作される際の一番最初のきっかけというのは、なんでしょうか。

石渡:
例えば次のイベントに向けて新作をつくろう!と思ったときは、それが春であれば、自分がその季節に身につけたいものはどんなものだろう?というところからスタートすることもありますし、電車の中で見かけたおしゃれな人に、こういうのが似合うだろうな・・と妄想したり笑。きっかけはいろいろだったりします。

さらに深く素材・人とつながっていく感じが楽しく、新しい展開が

JJ:
先ほども、やはり素材の持つ力について出てきましたが、やっぱり糸、などの素材からスタートすることもありますか?

石渡:
そうですね、ブランドスタートからこの3年で、糸屋さんとの信頼関係も少しずつ出来てきて、最近では糸そのものの制作現場を見せていただくようにお願いをして、京都まで足を伸ばしたりする機会があったりと、新しい展開もあります。素材と、人と、つながっていく感じは嬉しいものです。

JJ:
京都、、というと、伝統工芸的なものだったりでしょうか。

石渡:
はい、そうなんです。金糸・銀糸や、プラチナの糸なんかもあるんですが。その中には金箔やプラチナ箔を漆で貼っていく伝統的な職人さんの手仕事による糸もあります。太さ・光る感じ・質感の違いが本当にいろいろあって。まだこれを使ってアクセサリー作っている人はいないと思うよ!なんて言われて、じゃあなに作ろうかな、と心躍らせたりしています。

FSCN1885

JJ:
まさに素材との出会いに突き動かされている!という感じですね笑。

生まれてくる素材をどう生かしたらいいかが、制作の源になるという体験も

石渡:
そういうつながりでいえば、昨年New Pearl UWAJIMAという愛媛県宇和島の真珠をつかったプロジェクトに参加させて頂いたご縁で、真珠の養殖場を訪れる機会にもめぐまれました。青い海の中から小さな貝の渾身のきれいな一粒が生み出されるのを目の当たりにして。人の手をかけて、時間をかけて、そうして生まれてくる色や形がいろいろあることがいっそうきれいで、その真珠をどうやって生かしたらいいか、制作に向けて楽しみがまたできました。その真珠たちと京都の糸を使ってつくったシリーズは、先日アートフェア東京で発表させていただきました。

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JJ:
なんだか、絹が糸をつくるのと、真珠がパールをつくるの、何か近いものがありますよね。そういった有機的というか、意図があるものがお好きなのかもしれませんね。

石渡:
そうかもしれませんね。金糸にしろ、真珠にしろ、そういった素材からの課題みたいなものを、消化して自分の身につけて、新しいものを生んでいきたいという思いは高まってきています。

JJ:
今後としては、そういう作品にもどんどん取り組んでいきたいと。

石渡:
そうですね。日本の古い布をつかってみたいなとか、伝統的な祭事につかわせる日本の刺繍の技術とか、そういったものをアクセサリーにするとどうなるか、とか、そういったことも考えたりしています。挑戦したい素材はまだまだあると思います。

JJ:
石渡さんの目にかかったきらきら輝いた素材たちが、Stitchの世界観に入ってきたときにどう展開されるんでしょうね。きっと、しっくり収まるんだと思うんですけれど。刺繍、というと手作り感だったり、ちょっとやさしすぎるイメージも湧いてきますが、そういうほっこりイメージよりも、丁寧な手仕事でコンテンポラリーな印象を実現されているのがStitchの最大の個性ですよね!その個性が更に素材の力を借りて更に生き生きとしていくと思うので、本当に楽しみです。

今後は、作品性を大切にしたものも発表していきたい

石渡:
ありがとうございます。なので、これまでにつくってきたものの延長としてももちろん作り続けるし、一方でそういった作品性を大事にしたような新しいことにもどんどんチャレンジしていきたいので、今はとにかく時間が足りなくて。インスピレーションが湧くように、いろんな人にも会いたいですし。

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JJ:
素材も、人も、同列で創作のきっかけになって、制作に向かわれるよいテンポが伝わってきました!

石渡:
制作自体は、作業を淡々としていく地味な感じなんですけどね笑。単純作業の連続でもあるので、身体がつかれないように、なるべくリラックスして取り組んでいます。

ゆったりと制作をしながらお客様を待つ作業場も兼ねたお店は、妹さんと

JJ:
リラックス、というキーワードもそうですが、石渡さんの自然体でいらっしゃるその姿勢、何時もドアをあけて等身大を着々と楽しんで進んでいらっしゃる感じが、良い出会いを呼び込んでいらっしゃるんじゃないかと思います。
今日伺わせていただいたこちらのお店「Walts」は、Stitchのアクセサリー、石渡さんが刺繍されたバック、以外の貴金属のジュエリーも展開されてますが、こちらは、、

石渡:
妹のブランド「riro」と一緒にふたつのブランドの直営店として木~土でオープンしています。あいている間、お客様がいらっしゃらないときはここで、作業をしたりしながら、お待ちしているんですよ。

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JJ:
妹さんもブランドをお持ちなんですね!石渡さんがブランドをスタートされる際、妹さんもジュエリーデザイナーでいらしていることは、石渡さんご自身にやはり影響がありましたか?

石渡:
そうですね。2006年にバッグを作るブランドをはじめたんですが(詳しくは前回インタビュー参照)、そこから、アクセサリーだ!と思って展示会に出すのに、意見を聞いたり、お手伝いしながら展示会のブースを少しだけ借りてやってみて。それが確実に今につながっています。

JJ:
妹さんも今同じ業界にいて一緒にお店をできるって、なんだか素晴らしいですね。扱われている素材も違うので、意見を求め合ったりもしますか?

石渡:
します、します!私はカラフルな糸を使っているけど、妹は地金中心なので、金属の種類や扱い方など、教えてもらう事はたくさんあって。とても助かっています。

JJ:
同じバックグラウンドで育ちながらも、違う素材で同じ業界にいて、意見しあえるなんて、理想的なご意見番が身近にいるということですね。
使われている素材が全然違うので、来たお客様も楽しみになりますよね。

石渡:
はい、代官山にいらした際は、是非お立寄りいただいてゆっくりご覧いただけたらと思っています。

出会うべくして新たな展開に出会って進まれている石渡さん。落ち着いていらっしゃるけれど、良いリズムの中でちゃくちゃくと制作を進められるその姿勢が、その運を引き寄せていると思わされるような、明るい姿勢がとても印象的でした。

Stitchの作品は、4月1日(水)から伊勢丹新宿本館1階プロモーションスペースでご覧いただけます。インタビュー内でご紹介しているお店にも、あそびにいってみては。

interviewed by Hiromi Midorikawa
Stitch: http://www.stitch-ak.com/

* Stitch の作品は、4/1(Wed)-7(Tue) の期間、伊勢丹新宿1階プロモーションスペースでの出店でご覧いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。

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