極めてアートな思考から生み出される、差し引きされ残る美しさ:_cthruit

JJ:
今日は、よろしくお願いいたします。(たまたま、インタビューアーと梅田さんが大学/学部の先輩後輩だった経緯があり)お会いしていろいろお話伺いたいと思っておりました!

梅田:
よろしくお願いします。

JJ:
さっそくですが、_cthruit のデザイナーである梅田さんがジュエリーデザイナーを志すに至った経緯をお伺いしたいと思います。ブランドを始めて、今年でどのくらいでいらっしゃるのでしょうか。

梅田:
はい、ブランド名を決めたのが2008年で、そのときにしていた仕事をやめて、本格的にジュエリー一本でと動き出したので、あれからもう7年です。

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JJ:
大学では、ガラスやジュエリーというのを専門に学ぶ環境というわけではなかったとのことですが、どういったことを学ばれていたんでしょうか。

梅田:
なんだろう、もう忘れちゃった笑。でも、社会学、文化人類学、言語学、、、いろいろ興味があって学んでいたんですよね。それと、自分の学部で専攻できる科目ではなかったんですが、美学美術史学にも興味を持って、学びました。

JJ:
そこで、アートや美しいもの、と言う方向に惹かれていった訳ですね。

1年間 集中して制作に向き合うことで見出した、もののつくり方と取り組み方

梅田:
そう、それで大学は卒業して。私、オノヨーコが大好きで。大好きすぎて、自分でモノをつくるっていう発想は最初なかったんだけど、最初コマーシャルの制作会社に就職して、そこは体力的に厳しくて続かなくて。それでいろいろ仕事をしながら、作るのを試すようなことをはじめたんです。陶芸だったり、吹きガラスだったり、、工房を探して。そこで、ガラス、いいかも!と思って最初は週に1回、通い始めてつくっていたんですけど、しばらくして、これは集中してやってみないとわからないなと思って、仕事を辞めて、石川の能登島に1年行くことにしたんです。日本のガラスの工房って、富山・石川・福井の三カ所、北陸に集中していて。能登島を選んで勉強することにしたんですよね。それが、27歳のとき。

JJ:
その1年で、ガラスだ!と開花した訳ですね。

梅田:
いや、それが、1年で違うってわかったの笑。

JJ:
え!!!

梅田:
ガラスという素材にはしっくりきていたんだけどね、吹きガラスじゃないっていうことがわかった1年だったかな。私けっこうそういうことが多いんだけど笑。吹きガラスって、熱いうちにどうにかしなきゃいけないっていう、短距離走的なもので。一瞬で決めなければいけなくて、コントロールするのが難しいと言うか。

JJ:
吹きガラスが、ですね笑。熱いうちに息を止めての成形がものをいうものですもんね。ものも、大きいもの、丸い形態が多いですし。

梅田:
そうそう。例えばワイングラスを作る、っていうのは、吹きガラスの世界でいうとかなり究極なものなんですよね。薄ければ薄いほどいい、軽ければ軽いほどいい。でも、私、ガラスは好きだけど、使うものに興味がなかったんです。それで、ひとりで手のオブジェとか作ってました。

JJ:
使うものに興味はなかったけど、人体には興味があった、と。

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梅田:
そうなんです。それで、先生に手をつくる上で、ぶつかった問題について相談するんですけど、先生もすごく技術があって上手なのに、手はつくれないわけです。それで、「先生という立場にいるような技術を持った人でも、やったことないことはできないんだ」と実感して、習わなくていい!ということに気がついて。手をつくりたいなら、手をつくる方法を自分で考えるしかない。それで、また東京に帰ってきて、キャストを使ったり、バーナーを使って、オブジェをつくったりしはじめて。

JJ:
ガラスという素材と集中して向き合って、重要な気付きがあった1年だった訳ですね。そこから、ジュエリーの方面にはどのように進まれたのですか?

梅田:
友人がイベントをする際に出店したら、と言われて、せっかく出店するんだから持って帰ってもらいやすいものをつくろう!と思って、人の形をしたお香立てと、あとネックレスなんかを出したりしたんですよね。それまでにも、自分でほしいと思うものを作ったり、それを友達からほしいっていわれたりしていたので、その延長として。そうしているうちに、身につけるもの=体に着いてるものって面白いなと思いはじめました。それから、神戸のドラフトという合同展示会に出店して・・・そのとき、ボールの大きさがそれぞれ違うボールチェーンをじゃらっと重ね付けして、それがガラスで繋がっている、というデザインのネックレスを作ったんです。ガラスという素材で、見たことない感じで、絡まる、とか、形が着ける人によって違う、というのを自然と表現できて。それが気に入ったものをつくれたはじめてのジュエリーで、ジュエリーを本格的につくりはじめるきっかけになりました。

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「それをきっかけに何を見るか」、ということの気付きのためのもの

JJ:
シースルーイットの、最大の個性である、「ガラス・透明」という点にたどりついたのは、なぜなんでしょうか?

梅田:
私は、ガラスを使った作品をつくっているわけですけど、見える景色が変わることが重要なだけで、見える景色自体には関心がないんですよね。

JJ:
?!というと・・・

梅田:
例えば、色のついたサングラスをして見ると、全部色が変わるわけですよね。その、サングラスを通して何かを見ると色が変わるって言う経験をその人が出来ればそれでよいだけなんです。その色が変わってみた先の景色は、なんでもない景色がこの色で見るときれいに見える!だろうが、部屋のホコリがよく見えるようになった!でもなんでもいいんです。

JJ:
なるほど。つける方の視点に変化があればそれでいいと。

梅田:
ジュエリーをつくる前、オブジェをつくっていたときの作品で、ガラスの箱があって、筒状に穴を開けるんですけど、その角度が、ある日付の南中角度であるというのをつくったことがあって。例えば、自分の誕生日の6月16日の南中角度でつくられた箱があって、それを南に置いておくと、6月16日の、太陽が真上に来たときに直径分の一瞬の時間だけ、その筒の角度と光が重なる。その光をつかまえる装置をつくって展示したんですよ。見えないものが、見える装置ですね。

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JJ:
それはまたコンセプチュアルですね。今まで可視化したことのない些細なことが見えて、美しく、神秘的な世界です。

梅田:
そう、それと同じで、私が作るジュエリーもそれをきっかけに何を見るか、ということの気付きのためのものだと考えてます。

JJ:
ものすごくアートな発想ですよね。そしてそれが同時にジュエリーで身につけられるという。その両立のためには、ガラスという素材はぴったり。

梅田:
そうなんです。透明だから、何を見てるかわからないですよね。写り込みを見てる、反射してる光を見てるんです。ということは、ものは見てないけど、手で触れる。よくよく考えると、ものが見えるって何なの?ってなるわけです。だから、ものが見えるとは何か?という不思議を身につけてる、みたいな。

JJ:
ややこしいですけど、確かにそういうことですよね。でも、そう伺って身につけるとすごく体感できるお話だと思います。ジュエリーの存在っていうのは、華やかさをプラスしていくものというのが一般的な考え方だと思いますが、梅田さんにとっては、ジュエリーを通じて伝えたいことというのがあって、光を纏って小さな気付きを受け取ってもらう行為として、表現して伝わりやすいやり方がジュエリーだった、ということなんでしょうね。

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梅田:
そうかもしれないですね。お風呂にお湯をいれると、お湯が落ちてメラメラしている姿が見えるでしょう?水の中で、氷が見える・・とか。影と影が重なったときの色の濃さとか、透明なものなのに影が黒いとか。ささいなことで、みんな受け止めているけれど、とても不思議なことで、その何でもない不思議が美しいっていうことに気がついてほしいのかもしれない。

JJ:
昔から、そういうものが好きでしたか?

梅田:
そうですね、ずっと好きだったと思います。水も、ガラスも、アクリルも、ラップとか。透明なものは好き。ジェームズタレルの表現なんかも好きで、近いかもしれません。

身につけて、差し引きされて気がつく微かで透明な美しさを纏ってほしい

JJ:
確かに子供の頃いちいち感動してましたけど、見えなくなってしまっているかもしれないです、そういうことって。そういうささいだけど美しいことをおざなりにしてはいけないと、教えてもらえるジュエリーであるんですね。身につけると、差し引きされて新しく気づけるというか。

梅田:
つけてくれた方が、つけていて裸になる感じになってくれたらいいですよね。足したり引いたり、を楽しんでもらえたら。つけると10足されるけど、実際は9引かれて、1だけ残ってる、という。

JJ:
ジュエリーですから、一見平置きしてあったら装身具のものとして、10の存在ですよね。でも、透明な光の反射を実際は身につけるから、9ぐらい引かれて、1をつけてるみたいな。そして、その1が美しいわけですね。その1の美しさを纏う感覚を、楽しんでいただけたらいいですね。

梅田:
ガラスって、遠くから見ると、透明だから見えないでしょう。でも近づいてくると、だんだん見えてくる。ブランド名の_cthruit も、英語圏の人が見てもわからない言葉で、でもよく見て、読んでみて、またよく見てると「see through it」に見えてくる、、、そういう意味でつけたブランド名なんです。

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JJ:
なるほど・・・!!

梅田:
単純に、ジュエリーが好きで、ガラスが好きで、という方に身につけていただいて、なんとなくどこかで、そんな変化をもたらせていたらいいなと思っています。

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梅田さんに伺った_cthruit のコンセプトは、とてもコンセプチュアルである反面、梅田さん自身の感性はとてもフラットで受容性が高く、自然体にご自分のすきな美しいものに対して表現を重ねられている姿が印象的でした。

_cthruit のジュエリーは、4月1日より1週間、伊勢丹新宿本館1階プロモーションスペースにて展開されます。今回は、精製水とフランス産Fleur de sel(花塩)をガラス管に閉じ込めた、時間や記憶を身に着ける新シリーズが登場。是非、お立ち寄りください。

interviewed by Hiromi Midorikawa
_cthruit: http://kanaumeda.com/cthruit/

* Stitch の作品は、4/1(Wed)-7(Tue) の期間、伊勢丹新宿1階プロモーションスペースでの出店でご覧いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。


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